会社間をまたがる乗車券の発券もスムーズに
今回、発表を行ったのは首都圏で鉄道事業を行う、以下の8社だ。
・京成電鉄株式会社
・京浜急行電鉄株式会社
・新京成電鉄株式会社
・西武鉄道株式会社
・東京モノレール株式会社
・東武鉄道株式会社
・東日本旅客鉄道株式会社
・北総鉄道株式会社
今回の発表では、鉄道8社は「持続可能なシステムへの移行」、「より環境にやさしい用紙への置き換え」、「お客さまサービスの向上」の3つを主たる目的として掲げている。
現在の自動改札機は磁気乗車券専用の複雑な機構を採用するがゆえに、定期的なメインテナンスが必要だ。パーツの定期的な交換や読み取り部の清掃などマンパワーに頼っているが、それでも券詰まりなどのトラブルがしばしば発生するのはご存じのとおり。
これを非接触式のQRシステムに置き換えれば、より長期間にわたりストレスのない安定したユーザビリティーが実現できる。また、磁気乗車券の用紙は金属を含んでいるため、廃棄/リサイクル時には磁気層を分離しなければならない。QR乗車券は金属を含まないため、そのままリサイクル可能で環境保全につながる。
乗車券を出改札機のQRリーダーにタッチするだけ
QR乗車券については、導入時は鉄道8社が自動券売機から発券する「普通乗車券(近距離券)」のみに採用される。券売機で購入した普通乗車券のQRコードを出改札機のQRリーダーにタッチするだけ(現在の磁気乗車券のように出改札機へ投入する必要はない)。
イメージとしては、SuicaやPASMOに近い。QR乗車券の情報や入場/退場の利用状況は8社が共用するQR乗車券管理サーバーで管理されるので、他社線への乗り換えもスムーズに行えるようになるという。出改札機器の機種や利用方法など、より詳しい情報は各社から追って詳細が発表される。
裏が茶色い磁気切符も、首都圏では2026年度末から徐々に姿を消していく。一方で、すでにQR乗車券システムを導入している鉄道事業会社では、クレジットカードなどと組み合わせた決済方式も併せて導入しているのも事実だ。
今回発表を行った鉄道8社も「具体的な取り扱い機器・サービスは各社で検討中」としている一方で、「連絡運輸で関係する他の鉄道事業者と、お客さまサービス面での調整を進めています。お客さまの利便性に配慮しつつ、検討を進めていきます」と将来の本格的なMaaS社会の到来を予感させるメッセージも添えられている。少なくとも、導入時にはスマホと連携したデジタル決済のQR乗車券も視野に入っている可能性が高そうだ。
導入開始まであと2年余り。大きな所帯ゆえにさまざまな調整作業で現場の苦労は推して知るべしだが、各社から発表される続報を楽しみに待ちたい。なお、東急、京王、小田急、東京メトロ、阪神、阪急、近鉄などはすでにQRコードによるタッチ決済の導入もしくは実証実験の開始を発表済みだ。