トヨタが主導して開発を進める「ルナクルーザー」が、人類史上初めて月面“有人走行”をすることが決まった。だが、人類の好奇心はそれに止まらない。NASA主導で日本のJAXAも参加する土星衛星タイタンの探査プロジェクト“通称ドラゴンフライ計画”が、着々と進んでいる。探査機として用いられるのは、飛行・移動用動力に原子力発電を利用する大型無人ドローン「ドラゴンフライ(Dragonfly)」だ。(画像:NASA/JOHNSHOPKINSAPL/STEVE GRIBBEN)

大気と液体が存在する土星の惑星タイタン

タイタンは土星の衛星のひとつ。1997年に米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)の共同プロジェクトで打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」、およびそこから切り離された子機である惑星探査機「ホイヘンス・プローブ」によって、そこに大気と液体が存在することが2005年に確認されている。

画像: カッシーニが持ち帰ったデータを元に再現されたタイタン。ぶ厚い大気と液体、そして陸地があることが確認された。(画像:NASA/JOHNSHOPKINSAPL/STEVE GRIBBEN)

カッシーニが持ち帰ったデータを元に再現されたタイタン。ぶ厚い大気と液体、そして陸地があることが確認された。(画像:NASA/JOHNSHOPKINSAPL/STEVE GRIBBEN)

残念ながらホイヘンスによって確認されたのはそこまで。大気と液体があることでさまざまな仮説が唱えられており、そのなかには生命体存在の可能性や過去の大規模な気候変動の痕跡などを指摘するものもある。

その真偽の確認や発見に向けて、新たな土星探査機の打ち上げが計画されている。NASAを中心に、フランスのCNES(国立宇宙研究センター)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)、そして日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが参加している。この土星探査機がドラゴンフライであり、それにちなみ「ドラゴンフライ計画」と呼ばれている。

画像: ドラゴンフライ計画のPRビジュアル。(IMAGE CREDIT: ARTWORK BY MIKE YAKOVLEV, JOHNS HOPKINS APPLIED PHYSICS LAB)

ドラゴンフライ計画のPRビジュアル。(IMAGE CREDIT: ARTWORK BY MIKE YAKOVLEV, JOHNS HOPKINS APPLIED PHYSICS LAB)

原子力発電応用技術で飛行・移動する大型ドローン

このプロジェクトに採用される探査機「ドラゴンフライ」は、ホイヘンスのような定点観測機ではない。8つの回転翼(ローター)によって動力飛行が可能な離着陸機、つまり“ドローン”なのだ。

しかも、その動力には原子力発電応用技術である「放射性同位体熱電気転換器」という一般には馴染みのない高度な発電システムが採用される。機体の大きさは、大型の乗用車くらい。これが、タイタンの地表に着陸したり、空中を移動しながら探査を行う。ちなみにタイタンには濃密な大気が存在しかつ重力は小さいので、ドローンが飛行するのに都合がいい環境なのだという。

タイタン表層に豊富に存在するさまざまな有機物を採取したり、化学分析もその場で行うことが可能だというから無人の研究室だ。生命前駆物質(生命の起源のようなもの)がどのように進化してきたのかを検討するとともに、炭水水素性の生命が存在(もしくは過去に存在した)痕跡を探す。“ひょっとすると宇宙人に出くわすかも?”なんて想像するだけでワクワクする。

画像: 親機からの切り離された「ドラゴンフライ」はタイタンの地表近くまでパラシュートで降下。以後、原子力発電によるモーター駆動で自立飛行する。(画像:NASA/JOHNSHOPKINSAPL/STEVE GRIBBEN)

親機からの切り離された「ドラゴンフライ」はタイタンの地表近くまでパラシュートで降下。以後、原子力発電によるモーター駆動で自立飛行する。(画像:NASA/JOHNSHOPKINSAPL/STEVE GRIBBEN)

ドラゴンフライの打ち上げは当初2026年を予定していたが、現在は2028年7月に変更された。タイタンに到着するのは2034年を予定している。それから3年間の観測・探査が行われ、その間の移動や計測器の電源として原子力発電が利用されるのは上述のとおり。さて、どんな新事実が判明するのか。それがわかるのはまだ随分と先のことだが、世紀の大発見が公表される日を楽しみに待ちたい。

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