集めたデータは三次元化して立体視が可能
LiDARは「Light Detection And Ranging」の略称で、直訳すれば“光検出と測距”、つまり対象物に「レーザー光」をあててその反射光によって距離を検出する技術および機器のことだ。レーザーライダー、赤外線ライダー、3Dライダーと呼ばれることもある。高度差がある山岳地の測量、工場などの自動搬送車(AGV)、身近なところではロボット掃除機や実はスマホのカメラ機能(一部機種のピント調整など)にも簡易なLiDARが用いられている。
LiDARによって検出されたデータは、“三次元化”されているのが特徴だ。つまり立体視(3D化)できる。ゆえに誕生時には、土地の測量や気象の観測などから導入が始まった。そして現在では自動運転関連技術として、その精度の高さが再び注目を集めており研究開発が加速している。
LiDARとソフトの組み合わせで「レベル3」へ
自動車の世界で現在主流となっているADAS(先進安全運転支援システム:Advanced Driver Assistance System)は、カメラとミリ波レーダーの組み合わせが主流だ。たとえば、自動ブレーキや車線維持機能は両者の組み合わせで実行されている。ただし、現状では距離の測定は可能だが、建物、障害物、先行車などの形状を正確に検知することは難しい。それゆえ、ドライバーの運転監視が主となる「自動運転レベル2」となり、システムによる監視が主となる「自動運転レベル3」へ移行するハードルが格段に高くなる。
そこで注目されているのが、LiDAR技術の活用だ。上述のとおり、LiDARは距離を測るだけでなく形状まで検出できる。つまり、距離だけでなく位置や形状まで三次元でデータ化されるのだ。あとはこのデータを車両制御に活かすソフトウェアとハードウェアの進化にかかっている。
高精度な検知が可能なLiDARは、現在はカメラとミリ波レーダーによる従来システムとの組み合わせで採用されている。完全とも思えるLiDARにも実は弱点があるからだ(下表参照)。
現状、レベル3以上の自動運転の実現には、カメラ+ミリ波レーダーそしてLiDARの組み合わせで互いのデメリットを補完しあうのがベストと言われている。日本で初めてはレベル3を実現したホンダのレジェンドを始め、レベル3ではないものの、レクサスLSやトヨタMIRAIもカメラやミリ波レーダーと併用して搭載されている。
現在の主流は小型のソリッドステート式LiDAR
3Dで測定・検知を行う車載用のLiDAR(3D検知)は、かつては360度全方位の検知を行うため大掛かりな機械式回転軸をもつものが主流だった。ルーフの上に行燈のような形の大きな装置を載せた試験車両を記憶している方もいるだろう。現在は回転機構を省くことで急速に小型化が進み、複数のLiDARを搭載することで360度検知を実現するようになってきた。
現在、車載用LiDARの主流はソリッドステート式と呼ばれるタイプ。半導体技術や光学技術によって回転機構を排して小型化を実現している。回転軸がないためレーザー光の照射範囲が限られているが、非常に小型で取り付け場所の自由度が高いうえに機械的な故障がない。車載用にはうってつけのLiDARであり価格もこなれてきているので、360度センシングのために複数台数を取り付けることも珍しくはない(レクサスLSはデンソー製LiDARを4つ搭載)。
自動運転の進展とともに、LiDARの果たす役割は今後さらに重要になる。なかでも自動運転に不可欠となる高精度三次元地図情報の生成にはLiDARの存在が不可欠だ。刻々と変化するさまざまな交通情報を紐づけたものを「ダイナミックマップ」と呼ぶが、この情報をリアルタイムで収集するのがLiDARの役割だ。さらなる進化が期待されている。