いま買うならZEH基準を満たしている物件を選ぶべき
ZEH(通称“ゼッチ”)とは、簡単に言えば“再エネを活用した省エネ住宅”のこと。2025年から新築物件を対象に義務化される「省エネルギー基準(内壁・外壁の構造や素材、二重構造ガラスの採用など)」のうち最高レベル(等級5または6)をクリアしていることに加え、太陽光発電などの再生可能エネルギーの積極的な使用(創エネルギーと呼ぶ)がZEH認定基準として加わる。
国は2021年(令和3年)10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画で、「2030年以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」としており、2025年から実施される省エネルギー基準は、ZEH義務化の地ならしとも言える。
それゆえ、いま建設ラッシュに沸く新規分譲マンションでは、すでにZEH対応(もしくは2030年以降を見すえた再エネへの冗長性を備えている)が当たり前になりつつある。ちなみに分譲マンションのZEH基準は再生可能エネルギーの利用率に応じて、以下の4つに細分化されている。
・「ZEH-M」:再エネ利用率が100%以上。
・「Nealy ZEH-M」:再エネ利用率が75%以上100%未満。
・「ZEH-M Ready」:再エネ利用率が50%以上75%未満。
・「ZEH-M Oriented」:再エネ利用率は問わない。
もっとも、マンションの場合は太陽光発電だけですべての居住者の電力需要を賄うことは難しい。そのため、建物の大きさに応じて評価基準が定められる。3階建てまでの低層マンションでは「ZEH-M」もしくは「Nearly ZEH-M」、4〜5階建てでは「ZEH-M Ready」、それ以上の高層物件(タワマン含む)では「ZEH-M Oriented」が認定のガイドラインとして示されている。
「Brillia 新百合ヶ丘」が実質再エネ100%を達成する仕組みとは
では、最新の分譲マンションはどのようになっているのだろうか。ここではその具体例として、東京建物株式会社が2024年3月に発売した「Brillia 新百合ヶ丘」を例に解説しよう。
この物件は、神奈川県川崎市麻生区に新築される地上6階建ての分譲マンション。総戸数は79戸である。住居棟(建物全体)として「ZEH-M Oriented」、専有部(居住部)においては「ZEH Oriented」の基準を満たしているが、目を惹くのは「実質100%再生エネルギー利用」を実現したところだ。
6階建てなのでZEH Orientedに区分され、本来ならば再エネの利用率は問われない。敢えて「オンサイトPPA方式」を導入することによって、自前の太陽光発電と再エネ由来の外部電力(非化石証明書による)の高圧一括受電を併用することで、実質100%再エネを達成しているのだ。
オンサイトPPA方式とは、発電事業者が利用者の敷地内に太陽光などの発電設備を設置して、有償で電力を供給する仕組み。設備の維持・管理費用も発電事業者が行うのでランニングコストの利用者負担はない。
「Brillia 新百合ヶ丘」が採用するオンサイトPPAは、株式会社つなぐネットワークコミュニケーションが屋上に太陽光発電設備を設置し、太陽光発電で賄いきれない電力はつなぐネットが運営する「Msmart(エムスマ)電力一括受電サービス」によって供給される。このサービスでは、つなぐネットが地域の電力会社等から再エネによる高圧電力を一括購入し、マンション内に設置した変電設備で低圧に変換して各住戸専有部に供給することで電気料金を削減する仕組みだ。
再エネ利用率とそのシステムもチェックしたい
新築マンションのZEH化はすでに着々と進められており、今後はその規模を問わず再エネ利用率を付加価値として前面に推すマンションが急増する可能性が高い。オンサイトPPAは建物の規模(居住戸数)や発電設備を設置する敷地によって実現が難しいケースもあるが、ローン控除額の増額や光熱費の低減など実装できればメリットはいろいろとある。さらに資産価値を落ちにくいことも大きい。
現状では6階建て以上のマンションでは再エネ利用率は問わないとされているが、オンサイトPPAなどの導入で再エネ100%を謳う物件も急増するだろう。いま新築分譲マンションを探している方は、ZEH対応はもちろん、再エネ利用率とそのシステムに注目することをお勧めしたい。