開発拠点をドイツに開設、年内に飛行テスト実施
いまや過熱気味ともいえるほど活況を呈しているeVTOL(電動垂直離着陸機、いわゆる“空飛ぶクルマ”)の開発競争。先日も日本のSkyDriveとスズキがその製造を開始したばかり(3月7日発表)だが、海外でも大小さまざまなスタートアップが開発や事業化に鎬を削っている。そこにドイツから新たな情報が届いた。旅客機市場を米ボーイング社と二分している欧州のAIRBUS(エアバス)社が、いよいよeVTOL事業に乗り出すようだ。
エアバスのグループ会社であり、やはり世界市場で4割を超えるシェアを誇るエアバス・ヘリコプターズは、かねてよりeVTOLの実用化に向けて研究を続けてきたが、その新たな開発拠点をドイツ・ドナウヴェルトに開設。去る3月7日に施設を公開するとともに、今年後半に初飛行テストを予定している大型eVTOL「シティエアバス次世代プロトタイプ(CityAirbus NextGEN)」を初披露した。
公開されたプロトタイプは、8つの電動モーター/ローターで飛行する4人乗り仕様(オペレーターを含む)。翼幅はおよそ12メートルで重量は2トンクラスとやや大きめ機体ながら、旅客機やヘリコプターに採用される制御技術やアビオニクス(航空機用電子機器)の採用により高い静粛性と揺れの少ない安定した飛行を実現するという。巡航速度は120km/h、一回の充電で80kmの航続距離を目指しているという。
プロトタイプの機体は2023年12月に完成しており、現在は新しい開発拠点でモーターやローター、そして飛行制御技術などの熟成を行っている模様。関連省庁とも連携して、すでに旅客機として最高レベルの安全基準を満たしているが、将来的な自動飛行モードの搭載も視野に入れた開発が継続しているようだ。
前述のとおり初めての有人飛行テストは2024年後半に予定している。まだ情報は限定的だが、同社では「主要都市での様々なミッションの運用に最適」なeVTOLと位置付けており、「空飛ぶタクシー/空飛ぶバス」のような都市部での人の移動をメインに事業化を検討している模様だ。航続距離は当面80kmなので、たとえば飛行場からそのまま会議場のビル屋上にあるヘリポートまで短時間で移動するようなシーンで活用されるのかも知れない。
事業化に向けリース大手LCIとパートナーシップ契約
エアバスのアーバンエアモビリティ責任者であるバルキズ・サリハン氏は、「CityAirbus NextGenを初めて展開することは、高度なエアモビリティと将来の製品と市場に向けて私たちが取っている重要かつ非常に現実的なステップです。これを実現するのを手伝ってくれた世界中のコミュニティ、チーム、パートナーに感謝します」とコメントしている。
エアバスはグローバルネットワークとパートナーシップを拡大し、実行可能なAAM(アドバンスト・エア・モビリティ)市場を育成する独自のエコシステムの構築しているという。すでに大手航空リース会社であるLCIとパートナーシップ契約を締結し、戦略、商業化、資金調達というAAMの3つの中核分野でのパートナーシップシナリオとビジネスモデルの開発を検討していることも明らかにしている。エアバスは本気である。