日常使いできる自家用eVTOLがついに登場
日本では直接目にする機会はまだ少ないものの、eVTOLは着実に実用化に近づいている。去る3月1日、米マイアミに開発拠点を置くDoroni Aerospace社(以下、ドロニ)が発表した「H1-X」は、現状ではまだプロトタイプという位置づけだが、2026年には本格的な市販を計画している。ちなみに同社は、2023年7月に北米で初めて2人乗りeVTOLの開発用プロトタイプ「H1」で有人試験飛行に成功。今回発表された「H1-X」は、いわば量産に向けた試作機だ。
多くのeVTOLがエアタクシー需要を満たす多人数乗車型であるのに対して、H1-Xは2シーターのパーソナルモビリティ、つまり“自家用車”として開発されているところが目を惹く。公表されたプロトタイプの仕様は以下のとおり。
・機体重量:1850lbs(約839kg)
・定員:2名
・最高速度:120mph(約193km/h)
・航続距離:96.5km
・飛行(航続)可能時間:45分間
・充電所要時間:25分間
乗車定員は2名で、ボディサイズはおよそ“乗用車2台分”に相当する。全長などの数値はまだ公表されていないが、イメージ画像を見る限り従来の乗用eVTOLに比べ格段にコンパクト化されているようだ。ボディはカーボンフレームできわめて軽量だ。
エアモビリティを推進して道路を増やさず
H1-Xはジョイスティックで制御され、飛行を容易にするために半自動運転となるようだ。操縦にあたってはパイロットのライセンスではないものの、何らかの許可証が必要になる。とは言え、衝突防止センサー、気圧計、LIDAR、オプティックフローカメラにより、状況に応じた位置と安全性を実現するように設計されている。さまざまなテクノロジーが支援することによって最小限のトレーニングで、だれでも操縦ができるようになるという。
また、衝突防止センサー、気圧計、LiDAR、オプティックフローカメラなどにより、状況に応じた半自律航法を採用している。また4+2のファンの複雑な協調制御によって飛行するが、仮にひとつのファンシステムに障害が発生した場合にも他のファンがそれを補正して、それでも障害が解消されないと判断されるとバリスティック・パラシュートが展開して安全な着陸を目指すなど、安全性も高そうだ。
同社は、「H1-X」を通勤用のクルマや電車にとって代わる次世代パーソナルモビリティのひとつと見なしている。都市部のエアモビリティを推進することで道路の数を増やすことはないというのが同社のポリシーだ。
FAA(連邦航空局)による飛行安全性の認定を経て2024年末から始まる本格的な実証実験を行う。2025年には6台を販売、2026年中には日産7台を本格的な発売開始を目指している。ちなみに北米での目標価格帯は30万ドル〜40万ドル(およそ4500万円〜6000万円)。それでもすでに450件を超える受注があるという。自家用以外にも、さまざまな使い道がありそうだ。