ディーラーなどの急速充電器を利用することになる
マンション(集合住宅)に住んでいて、そこの駐車場に普通充電の設備があれば、何も問題はありません。もしも、普通充電の設備がなければ、充電器を設置するように、賃貸なら大家に、分譲であれば管理組合に相談してみましょう。普通充電設備をぜひとも設置してもらいましょう。無事にEVライフをスタートさせることができます。
では、大家なり管理組合から設置NGと言われたらどうなるのでしょうか。EVを買っても大丈夫がどうかといえば、その答えは「可能だけど、大変ですよ」となります。
自宅の駐車場で普通充電を行えないのであれば、充電は基本的に新車ディーラーなどの、最寄りの急速充電設備を利用することになります。その場合、EVを使うたびに30分なり、1時間なりの急速充電を行うことになります。急速充電は、1回30分を基本とします。
そして、現在、最も数多くある急速充電気の出力は50kWです。そのため1回30分の急速充電では計算上25kWhの電力しか充電できません。ところが実際は、一気に最高出力で充電するのではなく、徐々に電圧を上げてゆくという方式なので、1回30分では、もっと少ししか充電はできません。もしも、25kWh以上を消費していたら、1回ではなく2回、3回と30分の急速充電を繰り返すことになります。
もしも、エンジン車であれば、どれだけの距離を走ろうとも給油は1回5分ほどで済みます。しかし、EVの走行を急速充電のみで賄おうとすれば、30分単位での充電時間が必要になります。もちろん、1回の外出に5kmや10kmといった近場だけであれば、数回分をまとめて充電することは可能です。
ただし、100km単位でドライブに行くときは、帰ってきてから30分や1時間かかる充電を待つ必要が生まれてしまうのです。自宅に普通充電があれば、まったく話は違います。帰ったら、充電のプラグを指しておけば、寝ている間に充電が済んでしまいます。
ですから、自宅に普通充電の設備を用意できない人は、この手間暇があることを覚悟しなくてはなりません。だから、集合住宅で充電設備がない人は、「EVを買うのは可能だけど、大変ですよ」という答えになります。
●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。