搭乗したら戦闘したくなりませんか?
ツバメインダストリのCTO(最高技術責任者)である石井啓範(いしい あきのり)氏は、「アーカックスはロマンでできている」という。石井氏は長年勤めた建築機械メーカーの開発者を辞めたあと、実物大ガンダムを動かす夢の実現のために結成されたプロジェクト「GUNDAM GLOBAL CHALLENGE」でテクニカルディレクターとして開発指揮をとり、現在はツバメインダストリの一員という経歴を持つ。
自身を、アニメ『機動戦士ガンダム』を少年期に見て育ったいわゆるガンダム世代だと明かした上で、「この作品を見てエンジニアやデザイナーを目指した人は多くいて、それだけの魅力と強い影響力があります。だからこそフィギュアやプラモデルなどに需要があるのですが、こうした趣味をさらに発展させて“乗って動かせるロボット”をつくりたい、そんな思いからツバメインダストリの創業に携わりました」と開発背景を語った。
アーカックスが発売されたいま進行中のプロジェクトが、可変・変形ロボットデザインの第一人者として知られる河森正治氏がデザインした特別仕様の開発だ。
金属製フレームによってボディを支えているアーカックスは、頭部や腕部、脚部などをFRPパーツで装飾する構造となっているため、塗装色はもちろんのこと外装パーツのデザインを変更する、シールド(盾)を装着するなどフルカスタムに対応しているのだという。
このフルカスタムの究極モデルが2023年12月に発表された河森監督仕様の特装型アーカックスだ。直線的でゴツい標準仕様とは違い、流線型でスタイリッシュなデザイン画はすでに公開されており、開発も進んでいるというからプロトタイプの完成に期待がかかる。
アーカックスの次なる展開について質問すると、「乗ったのなら、戦いたくなりませんか」と逆に聞かれてしまった。
その答えはもちろんYESだが、4億円もする機体でガンダムのバトルシーンを再現しようなんていう猛者はいるのだろうか・・・。そこで検討されているのが、AR(拡張現実)技術の搭載だ。サバイバルゲームのように広大なフィールドを動き回りながら、そして隠れながらモデルガンを使って擬似戦闘できたとすれば、パイロットだけでなく観客も盛り上がりそうである。これは実際に開発しているというから楽しみだ。
また、レバーやペダルを操作して動かすというインターフェイスの技術が発展して、搭乗者もしくは遠隔操作する人の動きをロボットがそのままトレース、より緻密な動きを再現できれば、ホビーの枠を超えた次の段階も見えてくるかもしれない。