去る1月19日、ステランティスは次世代EVプラットフォームシリーズの第2弾となる「STLAラージ(Large)」の全容を発表。次世代EV用を謳うものの、内燃機関の搭載も可能なマルチなプラットフォームであることを明らかにした。北米で生産されるダッジとJeepブランドから採用されるが、アルファロメオ、マセラティの2ブランドにも採用を拡大予定。2024年から26年にかけてグローバルで8台の新型車が登場する。(タイトル写真は世界初の電動マッスルカー「ダッジ チャージャー デイトナ SRTコンセプト」)

ダッジ、JEEP、アルファロメオやマセラティにも

グローバルで14もの自動車ブランドを擁する自動車メーカーグループがステランティス。プジョー/シトロエン/DS、フィアット、フィアットプロフェッショナル、アバルト、アルファロメオ、Jeep……日本でも8ブランドを展開しているのはご存じのとおりだ。

そんなステランティスグループが、次世代車用EVプラットフォーム4種類を開発、集約して、各ブランドで使うことを発表したのは2021年7月に開催された「EVDAY 2021」でのこと。「STLAスモール(Small)」、「STLAミディアム(Medium)」、「STLAラージ(Large)」の乗用車系3種類、ピックアップトラック系に「STLAフレーム」が存在し、全ブランドにEVを投入することなどが明らかにされている。2023年7月5月には「STLAミディアム」が正式発表され、2024年の第4四半期に登場するDSブランドの新型車(DS4?)から採用が始まる。

今回発表された「STLAラージ」は、D/Eセグメント車に採用される乗用車系では最大級のサイズ。北米でまず2024年第4四半期にダッジとJeepブランドから新型車を発売開始、続いてアルファロメオ、クライスラー、マセラティなどにも拡大採用され、2026年までにグローバルで計8車種が揃う。

画像: D/Eセグメント車両に採用される「STLAラージ」プラットフォーム。サイズや車高、サスペンション形式に至るまで各ブランドごとにアレンジ可能な多様性を持つ。

D/Eセグメント車両に採用される「STLAラージ」プラットフォーム。サイズや車高、サスペンション形式に至るまで各ブランドごとにアレンジ可能な多様性を持つ。

エンジンやハイブリッドにも対応可能

EVとしての基本性能は、セダンに採用された場合、800kmの航続距離と、毎分4.5kWhの高い充電効率(800Vアーキテクチャーの場合)を誇り、さらに車種にもよるが0→100km加速2秒台というトップレベルのポテンシャルが与えられている。

さらに、異なる国(北米と欧州)で生産が可能な柔軟な構造をもち、伸縮の可能なホイールベース、バリエーションに富んだ全長、全幅、全高、そして最低地上高を可能にしている。サスペンション形式すらも変更可能だ。各ブランドが独自の考えに基づいたアレンジを施し、クロスオーバーSUVから乗用車までD/Eセグメントの幅広い車種で展開する。

驚かされるのは、モーターだけでなく内燃機関の搭載も可能なところだ。ステランティスは“マルチエネルギーバリエーション”と呼ぶが、つまりはトヨタが掲げる“マルチパスウェイ”を彷彿とさせる設計手法だ。

ただし、ステランティスはあくまでEVを前提に設計しているが、トヨタは既存の内燃機関搭載車のプラットフォームを活用してEV用に設計変更しているところが異なる。

ステランティスの「Dare Forward 2030」計画では、2030年時点に米国で乗用車とピックアップのEV販売比率50%を目指しているところから、今後北米市場ではEVとハイブリッド(PHEV)を2本柱にしていくと思われる。

画像: 内燃機関の搭載も視野に入れているところはトヨタが提唱するマルチパスウェイプラットフォームを彷彿とさせるが、STLAラージはあくまでEVが前提で機能的にはSDV的だ。

内燃機関の搭載も視野に入れているところはトヨタが提唱するマルチパスウェイプラットフォームを彷彿とさせるが、STLAラージはあくまでEVが前提で機能的にはSDV的だ。

オペレーションは400Vが標準で、800Vアーキテクチャーも用意するとのこと。搭載バッテリー容量は118kWhまで対応し、駆動ユニットは、モーター、炭化ケイ素半導体を採用したパワーインバーター、ギアリダクションの3つを一体化したスリーインワン・モジュール(EDM)。前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動などさまざまな配置と駆動方式が可能である。また、その性能はOTA(オーバー・ジ・エア)によりバージョンアップが可能な「SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)」でもある。

画像: モーター、炭化ケイ素半導体を採用したパワーインバーター、ギアリダクションの3つを一体化したスリーインワン・モジュール(EDM)を採用。

モーター、炭化ケイ素半導体を採用したパワーインバーター、ギアリダクションの3つを一体化したスリーインワン・モジュール(EDM)を採用。

【STLAラージプラットフォーム基本仕様】
・対応車両サイズ:全長4764〜5126mm×全幅1897〜2030mm
・ホイールベース適合範囲:2870〜3075mm
・最低地上高範囲:140〜288mm
・最大タイヤ径:858mm(32.6インチ)

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