バイクとクルマの利点を併せ持つ新モビリティ
2024年は軽商用車のEV化が一気に進むと言われている。三菱ミニキャブ ミーブに加え、今春発売予定のホンダ「N-VAN:e」、そしてトヨタ/ダイハツ/スズキの共同開発車も、導入時期は延期されたもののいずれ発売される。つまり、おもにラストワンマイルの配送業務分野では、既存の商用軽は急速にEVシフトが進むだろう。
一方、軽四輪よりもさらに小さく小回りの利く、“バイクでもない、クルマでもない”超小型商用EVの普及も待望されている。とくに宅配業界においては、ドライバー不足が深刻化しつつある。その解決策のひとつとして注目を集めているのが、だれにでも扱いやすく軽四輪よりも小回りが利く超小型商用EVというわけだ。
2023年10月に国内発売が開始されたベクトリクス「I-Cargo」は、まさにそんな需要と社会課題を解決する新しいモビリティである。全長2130×全幅1020×全高1815mmの小さな電動3輪カーゴスクーターで、登録区分は“側車付軽二輪自動車”となる。狭い路地にも入っていけるし、駐車スペースも最小限だ。
さらに利便性を高めているのが、バッテリーを脱着せずに充電できる2WAY充電方式を併用しているところ。つまり、電動アシスト自転車のように電池パックを交換して走ることもできるし、一般的なEVのようにコンセントタイプの充電プラグを直接車体とつないで充電することも可能だ。「充電中の待ち時間が長すぎる」、「航続距離が心配だ」、「充電設備を新設するのは面倒だ」。2WAY方式を採用することで、そんな疑問や要望に応えて導入障壁をクリアしている。
また、カーブではバイクのように車体を傾ける必要はなく、力の弱い人でも自動車と同じように行きたい方向にハンドルを切るだけで曲がるのも美点。信号待ちなど停車中も支える必要のない「完全自立型」なので、体格や年齢・性別を問わず、普通免許さえもっていれば誰でも運転が可能だ。
バッテリー搭載部に新システムを採用し航続距離を伸ばした
そんな「I-Cargo」がより一層使いやすくなって、今春より発売されることがアナウンスされた。現行型と同じく交換式バッテリーを採用しながらも、その搭載部に新たに開発したシステムを採用する。車体はそのまま、わずかな変更を加えることで2.1kWhのバッテリーを3連装することが可能になったという。一充電あたりの航続距離は大幅に延びて105kmになる。
【主要諸元 「I-Cargo」:今春発売予定モデル】
・全長×全幅×全高:2130×1020×1815mm
・重量:280kg(バッテリー含む)
・乗車定員:1名
・駆動用モーター出力:3kW×2(後輪左右)
・バッテリー容量:2.1kW×3
・充電時間:約4時間(AC100V・16Ah/車載普通充電接続時 ※バッテリー単体充電およびDC100V〜220V・10Ah普通充電にも対応)
・航続距離:約100km(従来型比+35km)
・最高速度:60km/h(スポーツモード) 20km/h(ECOモード)
・荷台スペース:幅920×奥行700×高1100mm(最大)
・最大積載量:100kg(荷台ボックス含む)
航続距離が100kmもあれば、決まったルートを走る商用車であることを考えれば充分過ぎるといえる。営業所が設定する配送エリア内であれば、むしろバイク的な機動性を活かして狭い道にも入って行けるので、軽自動車よりも利便性が高い。
ちなみにベクトリクスは、1996年に米国で誕生した電動マキシスクーターのメーカーがルーツ。その後、2022年にシンガポールに本社機能を移転した。日本上陸にあたっては、国内に部品センターを整備するほかアフターサポート体制も新たに構築。また、東京海上日動火災保険とも協業して利用環境の整備にも乗り出すなど、安心して利用できる基盤が整っているのもセールスポイントだ。
新バッテリーシステムを搭載した「I-Cargo」は、1月24日〜26日、東京ビッグサイトで開催される「第16回オートモーティブワールド 第4回MaaS EXPO」にて初公開される。配送事業者ならずとも気になる存在と言えるだろう。