ロボットにより周辺の交通環境を何回も再現
すでに量産車の一部はADAS機能として自動運転「レベル2」を提供する状況にあり、中には特定の条件下でレベル3の自動運転能力を備えたものもある。しかし、それらが市場に出るまでには自動車の安全性を評価する国際的なプログラムであるユーロNCAPやアメリカのNHTSAなどによって課せられる厳しいテストをパスしなければならない。
そのため、自動車メーカーはもちろん、サプライヤーはその試験を実施するために車両間の相対位置を高精度に制御できる能力が求められている状況にあるのだ。
しかも、その評価基準をクリアするためには何度も同じシーンを再現する必要が欠かせず、それを人間が担当することは不可能に近い。そこでその役割を担うのがロボットだ。ロボットなら条件さえ整えれば、求められた条件を高精度に何度でも展開することができる。ADAS試験用ロボットが登場したにはこうした背景がある。
この日実施されたADAS試験のデモには、イギリス・ABダイナミクス社のADAS試験機器を取り扱う日本電計と、オーストリア・ヒューマネティクス社の日本法人であるヒューマネティクス・ジャパン、オーストリア・4アクティブシステムズ社のADAS試験機器を取り扱うエア・ブラウンの3社が参加した。今回はその中からヒューマネティクス・ジャパンのADAS試験のデモを紹介したい。
この検証に使われるヒューマネティクス・ジャパンのシステムが、「UFO Pro Black」と「UFO micro」の2台。いずれもほぼ板状の台座のような形状をしており、UFO Pro Blackには乗用車の形をしたダミーを載せ、この状態で最高100km/hまでの速度で走らせることができる。UFO microも最高90km/hまでの速度に対応しており、この日はオートバイや歩行者のダミーを載せてデモを行った。
一方、基準となる車両側にはADAS用センサーが組み込まれ、ダミーをセンシングして停止したり、避ける動作のデータを取得する。つまり、UFO Pro BlackやUFO microによって実現される正確なダミーの動きを繰り返し再現することで、それに対応できるセンシングの検証に役立てていくというわけだ。
実施されたデモは、直進で交差する乗用車と二輪車に、サイドから別の車両が突っ込んでいくシーンと、すれ違った車両の先を右折した先に歩行者がいたというシーンの二つ。いずれもGNSS(衛星を使った測位システム)を使った高精度な測位の下でコントロールされており、設定したプログラム通りに正確にデモを展開することができたようだ。