まずはオーストラリアとニュージーランドへ投入
アメリカンラグジュアリーブランド、キャデラックは2035年までにラインナップするすべての乗用車をEVやFCEVといった電動車に切り替えることを宣言、その第一歩となるブランド初のEV「リリック」を2022年に北米市場で発売した。そのトピックは「アルティウム」という名のEV専用プラットフォームとバッテリーを採用し、総電力量は100kWhという大容量を実現していることだ。
一般的なリチウムイオンバッテリーの電池セルは硬質な外殻に覆われているが、アルティウムバッテリーは柔軟性の高い外皮でパッケージされたパウチ型電池セルを採用する。これはセルひとつ一つを軽量化できることに加えて、薄型形状であるため車種ごとのバッテリー搭載スペースに合わせた柔軟性の高い設計も可能にしている。
アルティウムバッテリーは電池容量を50〜200kWh程度に変化できるといい、コンパクトモデルからリリックよりもさらに大きなフルサイズSUVにまで対応する。実際に2023年8月に公開され、5.7m近い全長をもつエスカレードIQのバッテリーサイズは200kWhであることが公表されている。
リリックは北米市場で2022年の発売以来好調なセールスを記録、またスイスやスウェーデンをはじめとした欧州市場への導入も進み、ラグジュアリーEVの販売網拡大に向けた基礎を築きつつある。そしてさらなる市場規模拡大に向けて2023年11月16日に発表されたのが、左側通行の市場に向けた「右ハンドル仕様」の追加だ。
左側通行といえばイギリスやインドやニュージーランドなど市場規模の比較的大きな国がいくつかあり、実は今回の発表も右ハンドル仕様を主とするオーストラリアで発表されたものだ。GMプレジデントのエルネスト・オルティス氏によると「オーストラリアとニュージーランドはEVへの移行の形成期にあり、キャデラックの新たなビジネスチャンスである」と語り、2025年モデルとして発売するという。
同じく左側通行の日本市場については、本リリースの最後に2025年の導入を予定していることが書かれていた。
リリックのボディサイズは全長で約5m、全幅で約2mと、日本で販売されているSUVの中でもかなり大きい部類であるものの、フロントガラスやリアガラスを寝かせることでクーペのようなスタイリッシュなシルエットを持つ。
またEVらしくフロントマスクには大きく開口したグリルはなく、幾何学模様のような光源デザインを施されたブラッククリスタルのグリルが眼を引くが、これがかなりの迫力を持つ。フロント両サイドにある縦型のシグネチャーLEDライトも含めて、これが今後のキャデラックEVの新しい「顔」になっていくのだという。
駆動方式は1モーター(255kW/340hp)によるRWDと、2モーター(373kW/500hp)による4WDのふたつがラインナップされて、バッテリーサイズは前述のとおり100kWh、航続可能距離は北米のEPA基準で約494km〜505kmとしている。日本市場にどの仕様が導入されるのか、詳細はまだわかっていない。