世界最高の安全を目指すボルボの伝統はここでも健在
安全性能にも抜かりはない。今回は初の電動MPVカテゴリーへの参入にあたっていつにも増して気合が入っている。強力な安全ケージ構造を採用し、ホウ素鋼を含むさまざまな高強度鋼で構成されたボディは、衝突の衝撃を効率的に相殺する。また特徴的なダブルAピラー構造は、ドライバーにクリアな視界を提供するだけでなく、ボディの変形を抑えハンドリングの向上も可能にした。
高精細カメラ、サラウンドビューカメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーで構成されるソフトウェアと幅広いセンサーセットによって実現されるADAS(先進運転支援機能)も充実している。ドライバーに異常が発生した際の緊急停止システムも採用されている。
気になるEV性能はいかに? 独自情報も交えて補足
EM90の航続距離は中国のCLTCテストサイクルで最大738km。116kWhのバッテリーを搭載し、10%から80%の充電時間は30分未満と見込まれている。後輪に搭載されるモーターは出力200kW(約268ps)の電気モーターを搭載し、0→100km/h加速は8.3秒と発表された。また、フラッグシップSUVの「EX90」と同じく、V2G、V2H、V2Lなど双方向充電にも対応している。
今回の発表ではスペックに関する言及は限定的だったが、過去に小出しにされているティーザー情報や、編集部が独自に入手している情報を交えて補足しておこう。
まず、EM90に採用されるメカニカルコンポーネンツは、2022年11月1日に中国で発売されたZEEKRのプレミアムMPVである「Zeekr009」とほぼ同じと言ってよいだろう。ボルボもZEEKRも吉利汽車(Geely:ジーリー)傘下であり、共用は理にかなっている。
シャシは、リアセクションにアルミ鋳造一体成形のいわゆるギガキャストを採用したEV専用プラットフォーム「SEA(サスティナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャー)」。このE/Eプラットフォームは、ボルボのほかにも吉利汽車傘下のロータス、スマート、ポールスター、Link&Coなどでも採用される。また、詳細は不明だがOTAによるアップグレードが可能とされており、EM90にもその機能は一部実装されているはずだ。
バッテリーは高出力を誇るCATLのCTP3.0 Qilin。Zeekr009は全輪駆動モデルもラインナップしており、こちらはより大容量の140kWhバッテリーを搭載する。こちらの航続距離は822km(CLTC)、モーターの総出力は400kW(約536ps)で0→100km/h加速はわずか4.5秒を誇る。対して後輪駆動モデルはXM90と同じ116kWhバッテリーと200kWモーターの組み合わせとなる。
EM90の中国での価格は81万8000元(約1730万円)。まずは中国で発売し、今後は世界各国への展開も視野に入れているようだ。日本国内発売の可能性もあるだろう。また今回は後輪駆動車のみの発表だったが、ゆくゆくはZeekr009と同じく全輪駆動モデルがラインナップされるかもしれない。