買い物難民はいまや全国どこでも発生する可能性がある。そんな社会課題の解消に向けて、空中配送ロボット技術を使った世界初の配送サービスの実証実験が川崎市麻生区のUR虹ヶ丘団地で始まる。(タイトル写真は空中配送ロボットのイメージ)

かつての新興住宅地で進む高齢化、買い物難民の発生を解消する手段

少子高齢化が加速する日本において、いわゆる買い物難民の発生が深刻な社会問題になっている。過疎地は言うに及ばず、昭和後期〜平成の前期に大規模な開発が進んだ都市近郊のいわゆる新興住宅地でも、バスの減便や路線廃止、商店の廃業、さらには高齢ドライバーの免許返納など、さまざまな要因が絡み合って日々の生活に影響が出るようになってきた。

いわゆる買い物難民の発生である。ちなみに農林水産政策研究所では、「自宅からスーパーなど生鮮食料品店までの直線距離が500メートル以上離れ、かつクルマを所有していない人」を“買い物弱者”と定義している。いまはこの定義に当てはまらなくとも、その予備軍は全国いたるところにいると考えて差し支えないだろう。

ロープウェイ型の空中配送ロボットが受取ボックスに商品を運ぶ

そんな社会課題の解決に向けて、パナソニックHD、東急、UR都市機構の3者が世界初となる郊外住宅地における「空中配送ロボット」を活用した新たな配送サービスの実証実験を11月18日より神奈川県川崎市で実施する。

実証実験が行われるのは、川崎市麻生区にあるUR虹ヶ丘団地。東急田園都市線「あざみ野駅」または「たまプラーザ駅」、さらに小田急小田原線「新百合ヶ丘駅」に近い立地にありながら、いずれも最寄り駅からはバス便を利用する典型的な郊外型の大規模集合住宅地だ。緑豊かな住環境である一方、バス便利用や丘陵地ならではの団地内高低差などが、買い物などの利便性における課題となっていた。

画像: 注文した商品はロープウェイ型のロボットによって受け取りボックスまで運ばれてくる。(写真は実証実験のイメージ)

注文した商品はロープウェイ型のロボットによって受け取りボックスまで運ばれてくる。(写真は実証実験のイメージ)

実証実験では、住民専用のWEBアプリ経由で東急ストア、吉野家など協力店に商品を注文すると、指定時間内に団地内の受取場所にある受取ボックスまで配送ロボットが商品を届ける。ロボットはパナソニックが開発した新しい配送技術を導入し、空中に敷設されたケーブルを伝って移動する(ドローンではなく有線によるコントロール)。

直接自宅まで届けてくれるわけではないが、坂道を上り下りしてバスに乗って駅前まで出かける労力は大幅に軽減されるだろう。さらに、商品の受取場所に人が集い、外出や交流の機会が創出されることによるウェルビーイングの向上や、コミュニティの形成による地域活性化も期待されている。

画像: 受け取りボックスのイメージ。外出や交流の機会も創出され地域活性化も期待されている。

受け取りボックスのイメージ。外出や交流の機会も創出され地域活性化も期待されている。

3者は今回の実証実験を通じて、空中配送ロボットの技術およびサービスの効果検証に加え、配送業界における人手不足や配送コストの上昇といった社会課題の解決や、少子高齢化が進行する郊外住宅地における買い物の利便性向上のデータを収集する。今後は「虹ヶ丘地域」、隣接する「すすき野地域」(横浜市)への拡大を視野にいれて検討を進めていくという。

なお、11月18日(土)に虹ヶ丘団地で開催される「虹のまちにわフェス(川崎市・UR都市機構の共同開催)」では、空中配送ロボットのデモンストレーション運行も行われ、一般の見学も可能だ。

【実証実験の概要】
●実施目的
空中配送ロボットによる配送システムを試行的に運行させ、その効果や課題の把握、利用頻度や利用目的のニーズの把握と、生活への影響を調査する。
●実施場所
神奈川県川崎市麻生区虹ヶ丘2丁目 UR虹ヶ丘団地内
●実施期間
2023年11月18日〜2024年3月31日 不定期運行
●実施内容
住民専用WEBアプリから、東急ストア、吉野家などの商品を注文。指定時間内に団地内の受取場所にある受取ボックスまで配送ロボットが商品を届ける。
●協力会社
株式会社東急ストア/東急バス株式会社/株式会社URコミュニティ/株式会社吉野家

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