全国各地で行われている自動運転バスの実証実験。そこでよく見かけるのが、独得のフロントマスクが印象的な小型のシャトルバスだ。実はこの車両、国産ではない。フランスの「NAVYA(ナビヤ)」が開発したEVシャトルバスである。これはいったい何なのか?(タイトル写真は茨城県境町で定常運行中の「ARMA」)

仏NAVIAが開発したEVシャトルバス、日本のマクニカがサポート

NAVYA(ナビヤ)はフランスのスタートアップ企業。ドライバーの不足や大気汚染などさまざまな交通課題の解決を目指して、2014年に設立された。商用利用を前提に、EV車両だけではなく自動運転のソリューション全体をパッケージして開発しているのが特徴である。すでに世界20カ国以上、180台を超える導入実績がある。

日本の総代理店は半導体開発・商社の大手「マクニカ(MACNICA)」。同社は車両の輸入だけでなくナビヤへの出資も行い、ソリューション、システムのメインテナンスなどトータルで事業を行っている。

画像: ナビヤは2014 年に設立されたフランスのスタートアップ企業。車両だけでなく自動運転のソリューションも併せて開発している。

ナビヤは2014 年に設立されたフランスのスタートアップ企業。車両だけでなく自動運転のソリューションも併せて開発している。

現在、日本国内の実証実験に用いられているナビヤのEVシャトルバスは、「ARMA(アルマ)」とその進化型である「EVO(エボ)」。アルマは車内オペレーターが同乗するレベル3に対応。2020年7月にリリースされたエボは、オペレーターの搭乗が不要で遠隔監視と制御によるレベル4に対応している。アルマは茨城県境町や羽田空港で実証運行を経て定常運行されているので、実車を目にした人もいるだろう。

●アルマ主要仕様
・レベル3対応(オペレーター同乗)
・車両サイズ:全長4750×全幅2110×全高2650mm
・乗車定員:15人(座席11人、立席4人)
・最高速度:25km/h(推奨速度:18km/h)
・一充電所要時間/航続可能距離:9時間/100km

●エボ主要仕様
・レベル4対応(車内オペレーター不要)
・車両サイズ:全長4780×全幅2100×全高2670mm
・乗車定員:15人(座席11人、立席4人)
・最高速度:25km/h(推奨速度:18km/h)
・一充電所要時間/航続可能距離:9時間/100km

どちらも、ナビヤの誇る高度なセンシング機能が登載されている。そのシステムの基本構成を以下に挙げてみよう。
●「GNSS」
車両位置を特定。リアルタイムキネマティック(RTK)と呼ばれる技術により、基準局の情報を共有することで、誤差数センチを実現する。(搭載数:アルマ 1、エボ 2)

●「カメラ」
前後にひとつずつ搭載されており、自車周囲の安全確認を行う。

●「LiDAR」
赤外線を照射してその反射光によって障害物を検出する。ルーフには3Dタイプ、バンパーには2Dタイプを搭載。(搭載数:アルマ 8、エボ 10)

●「オドメトリ」
タイヤの回転回数をもとに走行距離を算出。

●「IMU」
加速度センサーと角速度(ジャイロ)センサーを組み合わせて車体の挙動をセンシングする。(搭載数:アルマ 1、エボ 2)

●「SLAM」
あらかじめLiDAR情報を用いて作成した地図情報と、走行中のLiDAR情報をマッチングして自社位置を特定する。

●「V2X」
信号など道路に設置してあるさまざまなインフラからデータを受信して、交通ルールを遵守する。

●「遠隔監視・制御」(エボ)
不測の事態に備え、集中管理センターでの監視、および介入が必要な場合に遠隔制御も行う。

基本的な乗車定員や車体寸法はさほど変わらない。アルマはレベル3対応でオペレーターの同乗が条件になるのに対して、エボはレベル4対応となることでオペレーターの同乗が不要になり、遠隔監視・制御による自動運転が可能になるのが大きな違いと言える。(※各機能はODD(運行設計領域)に基づく走行環境条件を満たす場合に限定)。

ともに導入にあたっては、実証実験の要件定義やスケジュールを設定するコンサルティング、事前調査や各種申請によるシステム設計、走行コースの作成や走行環境の設定、車両の保守メインテナンスやオペレーションの検証等など、最短で3カ月の準備期間が必要になるという。

レベル4の自動運転はシャトルバスがきっかけになると言われ、世界中のスタートアップや自動車メーカーが開発に鎬を削っている。今回紹介したナビヤのほか、トヨタ(e-パレット)、ホンダ×GM(オリジン)など日系メーカーも実用化を目指して開発は佳境を迎えているようだ。

地方はもちろん、都市部でも路線バスの路線廃止や便数減が目立ってきて社会問題となっている。そうした課題の解消に向けて、今後はEVシャトルバスが走る姿を目にする機会が増えてきそうだ。

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