2022年世界バッテリーシェア第2位のLGエナジーとの契約締結
米国で2022年8月に成立し、2023年4月に発行されたインフレ抑制法(IRA)によりEV購入における優遇税制に変化が起きたことはよく知られている。
従来、EVやPHEVなど電動車の種類や性能に応じて2500〜7500ドルの所得税控除が行われてきたが、新制度IRAでの所得税控除額は3750〜7500ドル(約50〜100万円)となった。ただし対象となる車種は北米生産であることを前提に、バッテリー製造地や使用する希土類の採掘・精製地までを判断される。
EV生産を従来のまま続けていたのでは税優遇の面で不利となる、こうした状況の中、何社かの自動車メーカーは北米にバッテリー生産拠点を構築するため巨額の投資をすることを発表している。
2030年までに30車種のEVを展開すると公表しているトヨタ自動車も、2023年10月5日にリチウムイオンバッテリーの北米生産についての供給契約をLGエナジーソリューション(以下、LGエナジー)と締結したと発表。ミシガン州にあるLGエナジーの工場にトヨタ専用のバッテリー生産ラインを2025年に稼働させるため約30億ドル、約4400億円もの巨額を新規投資するという。
年間20GWhの供給を予定しており、まずは2025年から生産される3列シートSUVの新型EVに搭載されるという。車種名までは明らかにされていないが、北米市場向けということを考えれば2021年に公開されたコンセプトモデル群、bZシリーズの中でも大きなボディを持つ「bZラージSUV」の市販モデル「bZ5X」ではないかと考えられる。
北米でのEV市場は今後拡大することが見込まれ、これに対応して拡充されるEVラインナップにも、LGエナジーで生産されたバッテリーが搭載される予定だという。
車載バッテリーの分野においてトヨタは20世紀からパナソニックとの協力関係にある一方、世界シェア第1位のCATLやEVメーカーとしても知られる第3位のBYDとも連携している。これに加えて今回のLGエナジーだ。トヨタとレクサス合わせてEVを30車種ラインナップし、年間350万台のEVを生産するための下地づくりを整えたといえるのかもしれない。
ちなみにLGエナジーは電動車向けリチウムイオンバッテリーの世界シェアで2位(2022年)につけている電池メーカーで、直近ではGMやヒョンデが北米バッテリー工場新設のために投資、またホンダがLGエナジーとの合弁会社を設立して北米市場でのバッテリー生産能力強化を図るなど、シェア拡大に突き進んでいる。北米ではすでに、建設中も含めて8カ所のバッテリー製造施設があり、生産ネットワークとサプライチェーンの地盤を持つ。