得意分野を持ち寄れば、開発・生産はもっと簡単になる
「MIHコンソーシアム」を立ち上げたのは台湾に本拠を置くFoxconn(フォックスコン)グループ。iPhoneをはじめApple製品の製造を一手に引き受ける世界最大のEMS(電子機器受託企業)グループだ。
2020年10月の自社イベントで「MIH(Mobility in Harmony)」というコンセプトを打ち出し、ソフト領域からハードウェアまで世界中から参加企業を募って、それぞれの得意分野を互いに供出し合うまったく新しいEV生産の仕組みを構築することを発表した。
従来の自動車産業は、基本的に“自前主義”である。商品企画・技術開発、設計・車両開発そして生産に至るまで、すべて自社内で行うのが通例だ。EVが主流となりつつある現在でも、それは変わらない。それゆえ、多くの自動車メーカーは開発にかかる時間とコストの圧縮に追われる一方、顕著になってきたSDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェア中心のクルマ)の流れに翻弄されている。
だったら、それぞれが得意な技術を持ち寄れば、クルマの開発や生産はもっとスピーディかつローコストで実現できるのではないか。「MIH」の考え方はシンプルかつ合理的だ。
とは言え、ハードウェア領域(プラットフォーム=車台関連)には、安全性や信頼性そして既存の自動車メーカーが積み上げてきた高度なノウハウが多い。膨大なコストと時間そして労力を必要とし、EV業界参入に関心を寄せる企業が二の足を踏む障壁となっていた。
そこでハードウェアとソフトウェアによるEVプラットフォーム規格をあらかじめ構築してオープンソース化することで、コンソーシアムに参加するメンバーは自由にそれを利用するようにすれば、自動車産業への参入障壁はとてつもなく低くなる。プラットフォームと基本ソフトを購入すれば、あとは自社の革新的なソフトウェアとデザインを含めたパッケージングで勝負する。