乗用車のFCEVの利便性が向上
水素と酸素を反応させて発電した電気でモーターを駆動して走るFCEV。広義にはEVの仲間なのだが、いま日本国内で発売されている乗用FCEVは、トヨタ「MIRAI」と韓国ヒョンデの「NEXO」のみ。今秋には新型クラウンセダン、2024年にはホンダがCR-VベースのFCEVを投入する予定だが、外部充電式のいわゆるEVに比べて盛り上がりはいまひとつだ。
とは言え、去る7月25日からはBMWが量産プロトタイプ「iX5ハイドロジェン」の市販に向けた公道実証実験を日本でも開始するなど、自動車メーカーはこれからも水素を使用する自動車に前向きだ。
ならば、そのインフラとなる水素ステーションを今から整えていく必要がある。全国では167ヵ所(2023年6月現在)の定置式水素ステーションが稼働しているものの、そのほとんどが四大都市圏を結ぶ幹線道路沿いに設置されている。FCEVは乗用車ではなくトラックや大型バスなどで先行して普及が進んでいるからだ。
必然的に、乗用FCEVユーザーもそれらを利用することになるわけだが、もっと自宅の近くや高速道路のSA/PAなどでも水素の充填ができればというのが本音だろう。
高速道路のSA/PAでは初の水素ステーション
水素はFCEVだけでなく、国の次世代エネルギー政策とも密接に関わっているので、どうしても乗用FCEVユーザーは置き去りになりがちだ。2023年6月に改定された国の「水素基本戦略」では、2050年カーボンニュートラルを達成するために、官民での共通認識として必要なビジョンが示された。その中で今後の水素ステーションは、乗用車のみならず、大型商用車などのニーズにも対応し、最適な整備を進めていくとされている。
そして事態はようやく動き始めたようだ。NEXCO中日本と中日本エクシス株式会社、そして岩谷産業株式会社は、東名高速道路・足柄サービスエリア(下り)でかねてより整備を進めていた水素ステーションを2023年9月15日(金)の14時にオープンすることを決定した。高速道路のSA/PAで水素ステーションが開業するのは日本初である。
NEXCO中日本は、「今回設置する足柄SA(下り)の利用状況やFCEVの普及状況などを踏まえ、高速道路への展開を検討します」と、さらなる設置にも前向きにコメント。また岩谷産業は、現在、高速道路外で53カ所の水素ステーションを営業中であり、今後もFCEV普及の促進、利便性向上を目指し、全国で水素ステーションの整備を進めていく意向を表明している。
日本でもEV普及にようやく光明が見えてきたところだが、諸外国はすでにFCEVの普及を視野に入れた政策を打ち出してきている。果たして日本はその波に乗ることはできるのだろうか。引き続き関心をもって見守っていきたい。
■水素ステーションの概要
名 称:イワタニ水素ステーション 足柄SA
事 業 者:岩谷産業株式会社
営業時間:8時〜20時
敷地面積:約1,000m2
供給方式:液化水素貯蔵(オフサイト型)
供給能力:平均300Nm3/h
※大型トラックにも短時間で充填が可能
充填圧力:82MPa(メガパスカル)※1MPa≒10気圧
充填口数:2口(2箇所)
所 在 地:東名高速道路 足柄SA(下り)