ヒョンデは2023年7月13日に英国ウェスト・サセックスで開催されていた「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で、「IONIQ 5 N(アイオニック・ファイブ・エヌ)」を発表した。これは「EVでもスポーツする」というヒョンデの宣言と言えるものなので、その内容を改めて見てみよう。

ドリフトを支援する技術も導入

「IONIQ 5」は日本でも発売されているSUVタイプのEVだ。一方、「N」はヒョンデの高性能ブランドであり、メルセデス・ベンツの「AMG」やBMWの「M」に該当する。ヒョンデは「N」のブランドを掲げて、WRC(FIA世界ラリー選手権)で戦っており、そこで鍛えられた技術や知見を「N」の量販モデルにフィードバックしている。

今回の「IONIQ 5 N」は、その「N」ブランドとして初のEVであり、ヒョンデとしては、今後もEV版の「N」モデルを追加していくことも、あわせて発表された。今回の発表では、同モデルのドリフト仕様も用意され、大いにイベントを盛り上げたという。

では、具体的に「IONIQ 5 N」がどのような内容になっているのかを説明しよう。ノーマルとの違いは、ホワイトボディの状態からスタートする。

E-GMP(エレクトリファイド・グローバル・モジュラー・プラットフォーム)のホワイトボディに42カ所の追加溶接と2.1mの追加接着剤を使用。モーターとバッテリーの取り付け部をはじめサブフレームなどを強化。ステアリングコラムは剛性がアップされ、ステアリングレシオを高めて、トルクフィードバックを向上させた専用チューニングのパワーステアリング「NR-MDPS」も採用されている。

ホイールは21インチの鍛造アルミホイールに。ダンパーサイズも拡大されており、減衰力の容量がアップしている。

また、フロントとリアのトルク配分を11段階に調整できる可変式のNトルク・ディストリビューションを搭載。リヤアクスルにはe-LSDが採用されている。

さらに最新の電子制御技術としてNペダルと、Nドリフトオプティマイザーなどが採用されている。Nペダルは回生ブレーキシステムを利用し、アグレッシブな荷重移動を可能とするもの。ターンイン時の挙動を制御し、応答性の高いハンドリングに貢献する技術だ。

Nドリフトオプティマイザーは、複数の車両制御技術を調和させることで、ドリフト走行を支援するもの。後輪駆動のエンジン車の、いわゆるクラッチ蹴りを模すことも可能としている。

Nグリンブースト時には650psを発揮する

パワートレインの強化も「N」モデルの特徴だ。モーターは最高2万1000rpmまでを許容し、Nグリンブーストと呼ぶ最大10秒間のブースト時には、478kW(650ps)のパワーを生み出す。Nローンチコントロールも用意され、プロドライバーのような素晴らしい加速を行うことも容易になっている。

サーキット走行を想定した熱対策も万全だ。バッテリーとモーターそれぞれの冷却システムに独立したラジエターを用意。さらに短時間のフルパワー走行を可能とする「ドラッグ」モードと、より多くの周回をこなす「トラック」モードを用意。さらに一歩進んだ、レース機能として、同様にパワー優先の「スプリント」と、走行距離優先の「エンデュランス」も用意されている。

画像: 高性能エンジン車のようなドライブフィールとサウンドを実現したという。

高性能エンジン車のようなドライブフィールとサウンドを実現したという。

強力なブレーキも「IONIQ 5 N」の特徴だ。フロントには400mmのディスクと4ピストンのモノブロックキャリパー、リアに360mmのディスクを採用。あわせて専用開発された回生ブレーキを搭載する。これは業界トップレベルの最大0.6Gの減速力を可能とし、ABS作動時も0.2Gを発揮。摩擦ブレーキと回生ブレーキの調和にも配慮されている。

ユニークな機能としてはN e-shiftとN Active Sound+がある。N e-shiftはエンジン車の8速DCTを再現する機能であり、N Active Sound+はパワートレインの働きを音でフィードバックする機能。

N Active Sound+は、エンジン車のサウンドの再現、昨年に発表したコンセプトEV「RN22e」をイメージした音、そしてジェット機にインスパイアしたという3つのサウンドが選べる。このN e-shiftとN Active Sound+を併用することで、エンジン車のようなクルマとの一体感が得られることになるのだ。

内外装のデザインもブラッシュアップ

もちろん内外装も特別なものが装備されている。エクステリアでは、専用のフロントフェイスに21インチの鍛造ホイール、専用リアウイング、リアディフューザーなどを装備。全高が20mm低くなり、全幅が50mm拡大、全長も80mm延長されている。

室内では、ステアリングホイールをはじめ、シート、ドアスカッフパネル、ペダルなどに専用品を採用。サーキット走行を想定する「N」ブランドならではのインテリアとなっているのだ。

この「IONIQ 5 N」は今後世界市場に順次投入されることがアナウンスされている。日本へもやってくることを期待したい。

<主要諸元>
●ボディサイズ:全長4715×全幅1940×全高1585mm
●ホイールベース:3000mm
●タイヤ:Pirelli P-Zero 275/35R21
●出力
 フロント166kW/226ps
 リア282 kW/383ps
 トータル448kW/609ps
●ブースト時出力(Nグリンブースト)
 フロント175kW/238 ps
 リア303kW/412ps)
 トータル478kW/650ps
●バッテリー総電力量:84kWh
●0→100km/h:3.4秒(Nグリンブースト)
●最高速度:260km/h

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