より速く、より高く、より遠くへ
空飛ぶクルマが話題だが、究極の「空のモビリティ」と言えば小型ビジネスジェットだろう。日本ではまだ数が少ないものの、海外ではエグゼクティブが当たり前のように使う乗り物になっている。
そうした中で抜群の納入実績を誇るのが「HondaJet(以下、ホンダジェット)」。ホンダの航空機事業子会社である「ホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company 以下、HACI)が手掛けるベリーライトジェット機(最大定員8名:乗員1名+乗客7名もしくは乗員2名+乗客6名)だ。2015年12月に納入が開始されて以降、「ホンダジェット エリート」、「ホンダジェット エリートII」とバージョンアップを重ねて現在に至っている。
そして6月13日(現地時間)、HACIは新たな試みとしてひとクラス上となるライトジェット機カテゴリーへの進出を発表した。
新型機は最大定員11名(乗員1名+乗客10名または乗員2名+乗客9名)のライトジェット機。ベースとなるのは2021年に開催された「NBAAビジネス アビエーション コンベンション&エキシビション」で公開したコンセプト機の「ホンダジェット 2600 Concept」だ。
ホンダ独自の技術である主翼上面エンジン配置、自然層流翼型・ノーズ、コンポジット胴体により、通常のライトジェット機より20%、中型ジェット機に対しては40%以上燃費向上を実現する。その結果、ライトジェット機として世界で初めてノンストップでのアメリカ大陸横断を可能にするという。また、パイロット1名での運用を想定して長距離飛行にも適した広いキャビン空間を確保するとともに優れた静粛性も実現し、より快適な空の移動が可能になる。
ちなみにホンダジェット エリートIIの最高巡航速度は422ノット(約782km/h)、最大運用高度は4万3000フィート(約1万3106m)、航続距離は2661km。対して新型小型ビジネスジェットは、最高巡航速度は450ノット(約833km/h)、最大運用高度は4万7000フィート(約1万4326m)、航続距離は4862km。より速く、より高く、より遠くまで飛べるのだ。なお、新型機は2028年ごろのアメリカ連邦航空局(FAA)の型式証明取得に向け、今後開発を進めていくという。
HACIの山崎英人社長は今回の発表に際し、次のようにコメントを寄せている。
「新型小型ビジネスジェット機の製品化によるライトジェット機カテゴリーへの参入はHondaの新領域である“空のモビリティ”への新たなチャレンジです。これまでに培ってきたHonda独自の航空機向け先進技術のノウハウを生かし、持続可能な社会の実現と人々の生活の可能性を拡げる喜びを提供していきたいと思います」
ホンダが小型航空機の開発に着手したのは1986年のこと。「自由な移動の喜びを空まで届けたい」という創業以来の想いを具現化した航空機事業は、さらなる高みを目指してチャレンジを始めた。原付バイクからビジネスジェット機まで手掛けるホンダは、まさしく本物のモビリティカンパニーである。