東京電力ホールディングス(東電HD)とトヨタ自動車(トヨタ)は、「電気自動車用蓄電池を活用した定置用蓄電池システム」を開発、2023年秋を目途に実証実験に入ることを発表した。

EV時代に求められる使用済み車載電池のリユース

トヨタのEV用車載電池・制御部品・技術と、東電HDの系統接続の知見が融合して共同開発されたこのシステムは、ユーラスエナジーホールディングスが所有する大規模風力発電設備「ユーラス田代平ウインドファーム」に併設され、東電HD、トヨタ、豊田通商、ユーラスエナジーの4社が連携して実証を行う。

現在、世界各国でEVを始めとする電動車の普及が急速に進んでいるが、今後は使用済みの車載用電池が大量に発生すると言われている。

また、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が拡大しているものの、自然由来ゆえ不安定な電源であるという問題は解消されていない。

このふたつの課題を同時に解決するために開発されたのが、東電HDとトヨタが開発した定置用蓄電池システムだ。

その仕組みを単純化すると、ユーラス田代平ウインドファームの風力によって作られた電気を、必要な分は電源系統に流し、使われなかった余剰電力は車載用電池に蓄えるというものだ。

画像: EV時代に求められる使用済み車載電池のリユース

また、天候不順や災害などで電力供給量が減少しそうなときには、車載用電池に蓄えた電気で補う。今回の実証実験で使用されるユーラス田代平ウインドファームの発電能力は7650kW、対して定置用蓄電池システムは出力1MW/容量3MWhだ。

もっとも、風力発電で作られる電気は「直流」、車載バッテリーに蓄えられる電流も「直流」だ。その間に企業や家庭で消費される電流は「交流」である。

つまり、作られた電気と蓄える電気はその都度「変換」されなければならない。この制御を需要量と供給量に合わせて緻密にコントロールするのが東電HDのEMS(エネルギーマネージメントシステム)であり、これに汎用のPCS(パワーコンディショナーシステム)を組み合わせている。

東電HDはこれまでの電気事業で培った系統接続の知見・運用技術・安全基準を、トヨタは車載用電池・制御部品・技術など、互いの知見を持ち寄ってその実用化に目途を付けたい考えだ。

なお今回の実証実験では、新品の車載用電池を連結して使用するが、使用済み車載用電池のリユース(再利用)を見据えている。

車載用電池は自動車用としての性能が多少劣化しても、電源として使える十分な容量が残っており、最終的に溶解処理して中に使われている貴金属を取り出して使うリサイクルの前段階として、さまざまなリユース方法が模索されている。定置用蓄電池への活用はそのひとつだ。

使用済み車載用電池のリユース実現と、再生可能エネルギーの普及・拡大によって加速する地産地消型エネルギーシステムの確立。カーボンフリー社会の実現はまだまだ先のことだと思いきや、予想外に早く到来するのかもしれない。

This article is a sponsored article by
''.