日本車は10台中5台、これは多いのか少ないのか
日本では今、EVの購入に対して「CEV(クリーンエネルギー自動車)導入促進補助金」という制度が用意されている。バッテリーを搭載することで高額になりがちなEVなどのクリーンエネルギー車に対する補助金を用意することで、その普及を促進するのが狙いだ。
予算規模は令和4年度に関しては補正予算700億円、令和5年度では当初案200億円となっている。補助金の額は車種・グレードごとに異なっており、65万円がベースとなり、条件をクリアすると最大85万円までが支給される。
条件とは「V2X対応、または1500Wの車載コンセント」を装備しており、かつ「省エネ法トップランナー制度の対象車種(型式指定自動車)」であることだ。
また、車両価格の低減をうながすため、メーカー希望小売価格(税抜)が840万円以上の高額なモデルは、補助金額に価格係数0.8を乗じる。つまり高額車両の補助金は少なくなるのだ。
そして、この「CEV(クリーンエネルギー自動車)導入促進補助金」の対象となるEVで、現在(2023年4月中旬)発売中のモデルから、お手頃なモデルとして車両価格が低い順に10台紹介しよう。ちなみに商用車は除いて乗用車のみとした。
1位:三菱自動車「eKクロスEV G」254万6500円
1位となったのは日産と三菱自動車によって共同開発された軽自動車の「eKクロスEV」だ。2022年6月16日に発売開始となっている。手頃な車両価格の理由は搭載する駆動用バッテリーの容量が20kWhと小さいこと。そのため一充電走行距離は180km(WLTCモード)に留まる。いわゆるシティコミューターに徹しているのだ。ただし、モーターの特性を生かして、最大トルク195Nmという上の大きなトルクを実現しており、キビキビした走りが魅力だ。
●車両価格帯:254万6500円〜308万1100円
2位:日産「サクラ X」254万8700円
1位と僅差となったのが日産の「サクラ」。1位の「eKクロスEV」の兄弟車だ。搭載バッテリーが20kWhで一充電走行距離180km(WLTCモード)は同じとなるが、デザインと装備類が異なる。とくに装備の差が価格差となっている。また、日産は独立したモデルとして「サクラ」を販売するのに対して、三菱自動車は「eKクロス」の1グレードとしてEVを用意するというスタンスだ。EV専用車とすることで、先進性を強くアピールしている。
●車両価格帯:254万8700円?304万0400円
3位:日産「リーフ X」408万1000円
2010年に初代モデルが誕生し、2017年10月にフルモデルチェンジして現行型の第2世代となったのが「リーフ」だ。国内で、最も長く、そして最も数多く販売されているEVとなる。2022年の販売台数は1万2732台を記録する。搭載する駆動用バッテリーは、40kWhと60kWhの2種類があるのも特徴。40kWh搭載車は一充電走行距離が322km(WLTCモード)であるかわりに安く、60kWhでは一充電走行距離が450kmだが高額となる。
●車両価格帯:408万1000円〜583万4400円
4位:BYD「Atto 3」440万円
中国のバッテリー&EVメーカーであるBYDによる乗用車EVの日本導入第一弾となるのが「Atto 3(アット・スリー)」だ。ミッドサイズSUVのEVである「Atto 3」は、2022年2月に中国で発売を開始し、オーストラリアやタイなどでも発売され、2022年末の時点で20万台を超える販売実績を積み上げている。58.56kWhのバッテリーを搭載し、一充電走行距離は485km(WLTCモード)を達成している。コストパフォーマンスの高さが魅力だ。
●車両価格:440万円
5位:マツダ「MX-30 EV MODEL」451万円
マツダのミッドサイズSUVである「MX-30」のEV版が「MX-30 EV MODEL」だ。2021年1月に発売開始となった。特徴は観音開きのドアで、クーペ的なスタイルと使い方を提案する。お手頃価格の理由は、搭載するバッテリーが35.5kWhと少な目だから。そのため一充電走行距離は256km(WLTCモード)しかない。ただし、発電用の小排気量ロータリーエンジンを搭載するレンジエクステンダー版を欧州市場に投入済み。日本導入を期待したい。
●車両価格帯:451万円〜501万6000円
6位:プジョー「e-208 アリュール」469万4000円
プジョーの基幹モデルであるコンパクトハッチバック「208」のEVバージョンが「e-208」だ。2020年7月より日本での発売が開始されている。プジョーは「ユーザーが好みで、エンジン車とEVの両方を選べるように、装備や車両価格をできるだけ同じにする」という「パワー・オブ・チョイス」という戦略を導入している。その戦略もお手頃価格の理由だろう。50kWhの駆動用バッテリーを積んで一充電走行距離454km(WLTCモード)を達成している。
●車両価格帯:469万4000円〜512万4000円
7位:フィアット「500e POP」473万円
フィアットの大ヒット・コンパクトハッチバック「500(チンクエチェント)」。そのEV版が「e500」で、2022年6月より日本で発売されている。ただし、そのボディから中味まで、ほとんど新開発されている。全長3630×全幅1685×全高1530mmのコンパクトな3ドアボディに42kWhの駆動用バッテリーを搭載し、一充電走行距離335km(WLTCモード)を実現する。また、ルーフを開放できるカブリオレを用意しているのも特徴だ。
●車両価格帯:473万円〜536万円。
8位:ヒョンデ「IONIQ 5」479万円
2022年5月より日本での販売を開始したミッドサイズSUVのEVが「IONIQ 5(アイオニック・ファイブ)」だ。13年ぶりの日本への乗用車導入を機会にブランド名を「ヒュンダイ」から「ヒョンデ」と改めた。「IONIQ 5」は「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」、「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザイヤー」の栄冠を獲得するなど、その実力は高い。駆動用バッテリーはエントリーが58kWh、中位以上グレードでは72.6kWhを搭載。一充電走行距離は498kmだ。
●車両価格帯:479万円〜589万円
9位:ホンダ「Honda e」495万円
2020年8月に発売となったキュートなデザインのコンパクトハッチバックが「ホンダe」だ。特徴は駆動用バッテリー35.5kWh/一充電走行距離259km(WLTCモード)という、小容量&小走行距離のシティコミューターという点で。また、後輪駆動で小回りが効くのも特徴となる。さらにダッシュボードに5つのディスプレイを並べたワイドビジョンインパネもユニークな点だ。隅々にホンダらしい新しい挑戦が感じられるEVだ。
●車両価格:495万円
10位:フォルクスワーゲン「ID.4」514万2000円
2022年11月に発売となったフォルクスワーゲンのEVが「ID.4」。ミッドサイズのSUVだ。同ブランドとして日本に最初に導入するEVとなる。現在販売されるのは通常グレードの「Lite」と上位の「Pro」。「Lite」は52kWhの駆動用バッテリーを搭載し435kmの一充電走行距離(WLTCモード)を実現。上位の「Pro」は77kWhのバッテリーで618km(WLTCモード)を実現する。現在のフォルクスワーゲンとしては珍しい後輪駆動車となる。
●車両価格帯:514万2000円〜648万8000円
以上が「いま日本で買える低価格EV、トップ10」だ。10台の国別内訳は日本車が5台、あとは中国車、フランス車、イタリア車、韓国車、ドイツ車が1台ずつだ。さらに日本車の内訳をみると日産車2台、あとは三菱車、マツダ車、ホンダ車が1台ずつということになる。
欧州車のEVというと、プレミアムブランドの高額車というイメージがあるが、もはやそうではなく、お手頃価格のラインナップも充実化しつつあるようだ。そして、やはりここにトヨタ車が1台もないのはEV購入を考えるユーザーとしては寂しい限りと言わざるを得ないだろう。