Gachaco(ガチャコ)の交換式バッテリーを採用
今年の1月26日に、スズキは「2030年度に向けた成長戦略」を発表。そのなかで、2030年までに8機種の電動2輪をリリースする予定であることを明らかにして業界の注目を集めた。この度、実証実験を日本で行うことが公表された「e-BURGMAN」は、成長戦略に基づく電動モデルの第一弾として、市場に投入されることが予想されている。
この電動スクーターが開発中であることは、海外メディアの報道や特許出願図の存在などにより、すでに多くの2輪ファンの知るところであった。ただし、特許図では車体固定式だった駆動用バッテリーは、昨年秋からスタートした日本初のバッテリーシェアリングサービス「Gachaco(ガチャコ)」の交換式バッテリーを使用する仕様に変更されていることが、今回の発表で新たに明らかとなった。
Gachacoが採用している交換式バッテリーは「Honda Mobile Power Pack e:」、そしてステーションに設置される交換機は「Honda Power Pack Exchanger e:」の技術をベースにしている。なおスズキが公表したe-BURGMANの航続距離(社内テスト値、60km/h定地走行)は44kmということから、搭載される交換式バッテリーの数は1つと思われる。
実証実験の場となるのは、東京・城南エリア
今回の実証実験の期間は4〜6月で、地域は東京都の城南エリアになる。使用拠点は直営販売店である「スズキワールド世田谷南」。用意されるe-BURGMANの数は8台で、スズキ二輪関係者および、スズキを通じて募集されるお客が、実証実験の担い手となるそうだ。
城南エリアという、極めて限定された地域が実証実験の場として選ばれた背景には、現状のGachacoのインフラ進捗度が影響しているのだろう。4月6日現在、Gachacoのバッテリー交換ステーションの設置数は、東京都に13ヶ所、大阪府に3ヶ所、そして埼玉県に1ヶ所という限られた数だ。東京都の設置数のうち4ヶ所は世田谷区に集中しているので、実証実験でe-BURGMANに乗る人の利便性を考えると、城南エリアが最も相応しい場となるのはいうまでもない。
気になる市販化は・・・ ズバリ、2024年度!?
ホンダは今年、日本と欧州で初のコンシューマー向け新型電動スクーター「EM1 e:」を発売することを予告しているが、この「EM1 e:」に搭載される交換式バッテリーは、もちろん「Honda Mobile Power Pack e:」である。またホンダの100%子会社であるHMSI(ホンダ モーターサイクル アンド スクーター インディア)は巨大市場インドに、2024年3月までに電動スクーター製品を投入する計画を明らかにしている。
さらにHMSIは、続いてバッテリー交換式の電動スクーターをインド市場に投入するとともに、インド全土の約6,000店舗を利用して交換ステーションを設置する計画があることを明かしている。そしてそのリリースの時期は、早ければ2024年の夏から秋の間と予想されている。
前述のとおりスズキのe-BURGMANもホンダEM1 e:と同規格の交換式バッテリーを使っているが、スズキも同じように現地法人の販売網を利用して交換ステーションを整備すれば、インドのホンダおよびスズキ製電動スクーターユーザーの利便性は大いに向上するだろう(そのような計画があるかどうかは定かでないが)。
通勤・通学や買物など生活の足として利用される小型・中型二輪車は、2024年度にバッテリーEVを投入いたします。2030年度までに8モデルを展開し、バッテリーEV比率25%を計画しております。趣味性の強い大型二輪車については、カーボンニュートラル燃料での対応を検討しております。
スズキの「2030年度に向けた成長戦略」に沿って、2024年度にはおそらくe-BURGMANの市販版が登場することになるのだろう。そのときまでに、Gachacoの交換ステーション網がどれだけ拡充されているか・・・が、日本市場における電動スクーター普及期の、初期の成否を左右することになると思われる。今後の発展を期待したい。