開発中の姿を世界の多くのメディアにスクープされているスズキの電動バーグマンこと「e-BURGMAN」が、実証実験の実施によって今春4月から日本の公道でもデビューすることになった。気になるのはその"市販化"だが、それはいつのことになるのだろうか。

Gachaco(ガチャコ)の交換式バッテリーを採用

今年の1月26日に、スズキは「2030年度に向けた成長戦略」を発表。そのなかで、2030年までに8機種の電動2輪をリリースする予定であることを明らかにして業界の注目を集めた。この度、実証実験を日本で行うことが公表された「e-BURGMAN」は、成長戦略に基づく電動モデルの第一弾として、市場に投入されることが予想されている。

この電動スクーターが開発中であることは、海外メディアの報道や特許出願図の存在などにより、すでに多くの2輪ファンの知るところであった。ただし、特許図では車体固定式だった駆動用バッテリーは、昨年秋からスタートした日本初のバッテリーシェアリングサービス「Gachaco(ガチャコ)」の交換式バッテリーを使用する仕様に変更されていることが、今回の発表で新たに明らかとなった。

画像: 昨年10月25日、東京都庁至近の西新宿第四駐車場にて行われた『EVバイクバッテリーシェアサービス』開始式。右は小池百合子東京都知事、左は株式会社Gachaco(ガチャコ)のCEO、渡辺一成氏。Gachacoはホンダ、スズキ、カワサキ、ヤマハの2輪メーカー各社と、エネルギー大手のENEOSホールディングスが設立。この取り組みは、交換式バッテリーの「国内コンソーシアム」と呼ばれている。

昨年10月25日、東京都庁至近の西新宿第四駐車場にて行われた『EVバイクバッテリーシェアサービス』開始式。右は小池百合子東京都知事、左は株式会社Gachaco(ガチャコ)のCEO、渡辺一成氏。Gachacoはホンダ、スズキ、カワサキ、ヤマハの2輪メーカー各社と、エネルギー大手のENEOSホールディングスが設立。この取り組みは、交換式バッテリーの「国内コンソーシアム」と呼ばれている。

Gachacoが採用している交換式バッテリーは「Honda Mobile Power Pack e:」、そしてステーションに設置される交換機は「Honda Power Pack Exchanger e:」の技術をベースにしている。なおスズキが公表したe-BURGMANの航続距離(社内テスト値、60km/h定地走行)は44kmということから、搭載される交換式バッテリーの数は1つと思われる。

画像: ICE(内燃機関)搭載スクーターの人気モデル、バーグマンストリート125EXをベースに生み出された「e-BURGMAN」。日本での区分は「原付二種」となる。車体側面のe-BURGMANのロゴ下に、日本初のバッテリーシェアリングサービスである「Gachaco(ガチャコ)」のロゴが貼られている点に注目されたし。 www1.suzuki.co.jp

ICE(内燃機関)搭載スクーターの人気モデル、バーグマンストリート125EXをベースに生み出された「e-BURGMAN」。日本での区分は「原付二種」となる。車体側面のe-BURGMANのロゴ下に、日本初のバッテリーシェアリングサービスである「Gachaco(ガチャコ)」のロゴが貼られている点に注目されたし。

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実証実験の場となるのは、東京・城南エリア

今回の実証実験の期間は4〜6月で、地域は東京都の城南エリアになる。使用拠点は直営販売店である「スズキワールド世田谷南」。用意されるe-BURGMANの数は8台で、スズキ二輪関係者および、スズキを通じて募集されるお客が、実証実験の担い手となるそうだ。

城南エリアという、極めて限定された地域が実証実験の場として選ばれた背景には、現状のGachacoのインフラ進捗度が影響しているのだろう。4月6日現在、Gachacoのバッテリー交換ステーションの設置数は、東京都に13ヶ所、大阪府に3ヶ所、そして埼玉県に1ヶ所という限られた数だ。東京都の設置数のうち4ヶ所は世田谷区に集中しているので、実証実験でe-BURGMANに乗る人の利便性を考えると、城南エリアが最も相応しい場となるのはいうまでもない。

画像: スズキ e-BURGMANの主要諸元は、全長1,825mm、全幅765mm、全高1,140mm、シート高780mm、車両重量147kg、定格出力0.98kW、最高出力4.0kW、最大トルク18Nm、航続距離44km・・・というもの。 www1.suzuki.co.jp

スズキ e-BURGMANの主要諸元は、全長1,825mm、全幅765mm、全高1,140mm、シート高780mm、車両重量147kg、定格出力0.98kW、最高出力4.0kW、最大トルク18Nm、航続距離44km・・・というもの。

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気になる市販化は・・・ ズバリ、2024年度!?

ホンダは今年、日本と欧州で初のコンシューマー向け新型電動スクーター「EM1 e:」を発売することを予告しているが、この「EM1 e:」に搭載される交換式バッテリーは、もちろん「Honda Mobile Power Pack e:」である。またホンダの100%子会社であるHMSI(ホンダ モーターサイクル アンド スクーター インディア)は巨大市場インドに、2024年3月までに電動スクーター製品を投入する計画を明らかにしている。

さらにHMSIは、続いてバッテリー交換式の電動スクーターをインド市場に投入するとともに、インド全土の約6,000店舗を利用して交換ステーションを設置する計画があることを明かしている。そしてそのリリースの時期は、早ければ2024年の夏から秋の間と予想されている。

前述のとおりスズキのe-BURGMANもホンダEM1 e:と同規格の交換式バッテリーを使っているが、スズキも同じように現地法人の販売網を利用して交換ステーションを整備すれば、インドのホンダおよびスズキ製電動スクーターユーザーの利便性は大いに向上するだろう(そのような計画があるかどうかは定かでないが)。

通勤・通学や買物など生活の足として利用される小型・中型二輪車は、2024年度にバッテリーEVを投入いたします。2030年度までに8モデルを展開し、バッテリーEV比率25%を計画しております。趣味性の強い大型二輪車については、カーボンニュートラル燃料での対応を検討しております。

スズキの「2030年度に向けた成長戦略」に沿って、2024年度にはおそらくe-BURGMANの市販版が登場することになるのだろう。そのときまでに、Gachacoの交換ステーション網がどれだけ拡充されているか・・・が、日本市場における電動スクーター普及期の、初期の成否を左右することになると思われる。今後の発展を期待したい。

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