それぞれのサービス内容はかなり異なる
クルマを所有せずに、必要な時だけ借りてモビリティを楽しむ。そんな時に重宝するのがレンタカーだったが、現在はカーシェア(カーシェアリング)の利用も広まっている。
クルマを借りるという行為そのものは同じなのだが、それぞれの特徴はかなり異なる。まずはその特徴を一般論で整理しておく(個々の事業者によって詳細は異なる)。
【レンタカー】
レンタカーは店舗からクルマを借りて利用する。クルマを必要な時だけ利用できるポピュラーなサービスだ。
■会員登録は原則不要。会員になると割引が受けられるなどの特典を設けているところもあるが、会費は発生しないことがほとんど。スマホやPCなどで事前予約もできる。
■さまざまなタイプのクルマが用意されており、目的に合わせて選択することが可能。
■借り出しに際しては、レンタカー事業者の店舗に行き直接手続きしなければならない。その際、免許証の確認、傷の有無の確認、誓約書の記入などの手続きが必要。
■返却時は燃料満タン返しが原則。また、借り出した店舗以外でも、同系列店ならば返却可能な「乗り捨て」ができることもある。
■料金は車両の種類や大きさ、時間単位(最低貸し出し時間があることが多い)で設定。
■走行距離に比例した追加料金は発生しない。
■車両の借り出し、返却とも店舗の営業時間内のみ対応(早朝や深夜は営業していないので)。
■借り出し時に車両の清掃が行き届いている。
【カーシェア】
カーシェアとは、複数の会員が共同でクルマを使用できるサービス。店舗に出向かなくても、指定の場所(ステーション)から乗り出し・返却できるサービスで急速に普及している。
■運営する事業者の会員登録・年会費など初期費用が発生。月額会費も必要。利用時はスマホやPCなどで事前予約する。
■車種のバリエーションは少ないので、乗車人数や積載量に関しては妥協が必要なこともある。
■受け渡し駐車場(ステーション)に行ってすぐに走り出せる(施錠・解錠は会員カードなどで行う)。
■返却時に満タン給油は不要。使用した燃料代は運営事業者が負担する(使用者が満タンにすれば割引される)。ただし「乗り捨て」は認められておらず、最初に止めてあった場所(ステーション)以外での返却はNG。
■短時間の利用が可能。利用設定は分単位。利用料金は車種、利用時間に加え、距離も加算される。
■早朝・深夜とも利用可能。
■清掃・除菌などのメンテナンスは不定期。
特徴を理解してうまく使い分けることが必要
近年、カーシェア事業は多様化しつつある。上記のようなレンタカー的事業モデル以外に、個人所有のクルマを仲介事業者が提供するアプリを通じて利用したり、(割高になるが)車種を指定して利用できるサービスなども登場している。
とは言え、これらの新サービスはまだ普及はしていない。現在の主流は、やはりレンタカー的な使い方だ。そういった事情をふまえた上で、それぞれのメリットとデメリットを見てみよう。
【レンタカーの〇メリットと×デメリット】
〇初期費用がかからない
〇目的に応じた車種が選べる
〇走行距離に応じた料金が不要。
〇「乗り捨て」が可能な事業者が多い。
〇きれいなクルマに乗ることができる。
〇チャイルドシートやスタッドレスタイヤなどのオプションも選べる。
×営業所や店舗までクルマを受け取りに行かなければならない。
×店頭での手続きに時間がかかる。
×短時間の利用は割高(最低利用時間があらかじめ設定されている場合がほとんど)。
×営業時間外の借り出し・返却は不可。
×予約日近くにキャンセルすると取り消し料が発生。
【カーシェアの〇メリットと×デメリット】
〇近場のステーションから借り出し・返却できる。
〇対面の手続きが不要。
〇利用時間が細かく設定されている。
〇燃料代が原則不要。
〇直前のキャンセルが可能で取り消し料も発生しない。
×会員登録・年会費・月額会費などが発生
×車種が少ないので、用途や目的によっては妥協しなければならない
×走行距離に比例して料金が上がる。
×「乗り捨て」ができない。
×定期清掃のみなので、きれいかどうかは直前に利用したドライバー次第。
こうしてみると、それぞれの長所と短所を補完しあっているとも言えそうだ。
あえて言えば、長距離を長時間走る場合や目的に合った車種をチョイスしたい場合はレンタカーが勧められる。レジャーで利用する場合などは、現地の宿泊施設や食事などの優待特典が付くこともあるので確認すると良い。
クルマの利用頻度は高いが、短時間で用事が済む場合などは、カーシェアに軍配が上がる。たとえば地方出張が多く、現地ではクルマで移動する必要がある場合には、カーシェアを利用する方が面倒がないうえ料金も安く、時間を効率良く使えるだろう。
とは言え、今後は超小型モビリティを使ったカーシェア事業の本格化やMaaSの進展に伴うレンタカー事業要件の緩和など、クルマのシェアリング環境は大きく変わっていく。レンタカーとカーシェアの需要は今後ますます高まっていくいく一方で、その境界は徐々に曖昧になっていく可能性がある。