200V用の専用配線は通しておいた方がいい
結論から言えば、新築する住宅に駐車スペースがあるならば、いまはEVやPHEVを所有していなくとも、将来に向けて充電設備との親和性は考えておく必要がある。
家庭用充電設備というと、いわゆる“V2H”のような家庭電源とクルマの双方で充放電が可能な本格的なものを連想してしまいがちだ。もちろん、V2Hは理想のひとつではあるのだが、クルマへの充電機能だけに絞れば、まずは簡易な充電用コンセントや、より本格的な普通充電器からまずは検討を始めるべきだろう。
どちらも単体では家庭への給電機能はないが、新築時に交流200V用の専用配線を通して充電用コンセントもしくは普通充電器を取り付けておけば、あとあと壁に穴を空け直したりする必要がなく、設置場所の自由度も高くなる。配線用の配管が外から見えず、建物の美観にも影響は少ない。そして何より、導入費用の大きな割合を占める工賃や技術料を大幅に圧縮できる。
ちなみに家庭用交流100Vでも専用のEV充電用ブレーカーと配線に交換すれば充電は可能だが、充電スピードは0.6kWhから1.2kWhと実にスロー。専用の交流200Vならば、16Aで3.2kWhまで充電スピードを上げることができる。
近年増えている高出力型普通充電器ならば、6kWhまでスピードアップが可能だ。200Vあれば日常的な走行であれば、一晩充電しておけば足りるだろう。そもそも各家庭の分電盤までは200Vが来ているので、あえて100Vを選択する理由は見つからない。
充電設備にはMODE1から4までがある
充電設備にはMODEという区分法もあり、車載ケーブルを使って交流200V充電用コンセントから直接充電するのが「MODE1」、車載ケーブルに制御装置(コントロールボックス)が組み込まれ現在主流となっている「MODE2」、そして充電器側に制御回路を組み込み専用ケーブルとコネクタが繋がったやや大掛かりな充電器は「MODE3」と呼ばれる。車載ケーブルを使うMODE1/MODE2は「充電用コンセント」、MODE3は「普通充電器」と呼ばれる。ちなみに後述する急速充電器はMODE4だ。
普通充電とは、家庭用と同じ交流電気をそのままクルマに送り込み、車載充電器によって直流に変換してバッテリーに蓄電する方式のことだ。
【充電用コンセント】
ほとんどのEV/PHEVは、コンパクトなコントロールボックスが付いた車載の充電ケーブルが附属している。コネクタ側をクルマの給電口に差し込み、もう一方の端にあるプラグを充電用コンセントに差し込めば充電開始だ。
充電のたびに荷室から充電ケーブルを取り出して接続しなければならないのは骨が折れるが、屋内の100Vコンセント並みにコンパクトで、コストパフォーマンスでは他の充電設備を圧倒する(コンセント本体は数千円から。新築時に配線・取り付けしてしまえば工賃も大幅に抑えられる)。
EVやPHEVを家電感覚で扱いたい、またすぐには必要ないが将来はEVやPHEVを買う可能性があるならば、まずは充電用コンセントから導入してみるという選択もいいだろう。
【普通充電器】
普通充電器は、建物の壁面に取り付ける壁掛け式や自立したスタンド型が一般的だ。充電器側に充電ケーブルやコネクタが接続されているので、充電時にはそれを引き出してクルマの給電口に差し込むだけなので労力は充電用コンセントに比べて大幅に軽減される。
漏電防止機能や車両と充電器の間に通信機能を持たせて充電の制御機能を搭載した製品も多く、充電スピードを上げた6kWの高出力タイプも増えている。さらに、充電ケーブルを目立たないように収納するボックスが付いているタイプも多い。
ただし、充電用コンセントに比べると機器の価格はそれなり(十数万円から)で、設置スペースも考慮する必要がある。新築時なら設置・配線にかかる工賃などは充電用コンセントとさほど変わらないはずだが、補助金を活用したとしてもハードルはやや高くなる。
なお、普通充電器のような収納ボックスを組み合わせた自立型の充電用コンセント(車載ケーブルを差しっぱなしにできる)もあるが、その場合は緊急用に車載ケーブルをもう1本買い足して常時携行したい。このケーブルは単品だと結構高く、5万円以上することも多い。収納ボックスタイプの充電用コンセントにするか普通充電器にするか、こちらもよく検討する必要がある。
最後に。急速充電器は充電器側で直流に変換して、文字どおり短時間で充電を完了する。高圧電源を充電器側で変換するために、さまざまな制御機構が搭載される精密機器であり、それゆえ定期的なメインテナンスも必要になる。
そして何より高価(数百万円!)で設備も大掛かりになので、家庭用として考えるのは非現実的である。長距離のドライブなどで蓄えた電気が減ってきたら道中の急速充電器でつぎ足すというのが通常の使い方だ。