2025年7月31日、ゲーミングPCの世界的ブランドとして知られるMSIが、日本のEV充電市場への参入を表明した。その背景にあったものは何だろうか? また、その製品内容と今後の見通しは? 連載第1回目は、MSIがEV充電事業に進出した、その経緯に迫る。

「温室効果ガス排出量ゼロ」の実現を見据えた、次世代ビジネスへの参入

MSIのEV充電事業への技術的な強みは、優れた冷却技術だけではなく、同社の40年の歴史で培った電源制御技術や制御システム開発の経験、さらにハードウエアからソフトウエアまで一貫して開発できる体制も、EV充電事業を支える重要な技術基盤となっている。その一例がモバイルアプリ「MSI aConnect」、充電器管理システムの「MSI eConnect」の開発運営である。

MSIではEV充電器の製造はもちろん、EV充電器と連携しているアプリや管理システムも自社開発で賄っている。それが同社のEV充電ソリューションの、包括的かつ優れたサービス内容の提供を可能にしており、EV充電業者の中にはアプリや管理システムの開発・管理を他社に依存しているところもあるが、MSIは一社ですべてのサービスを提供できる。

すべてのサービスを一社完結で提供しているので、EV充電サービスに対するあらゆるニーズに、柔軟に対応できるのも同社の強みだ。

画像: MSIでは、PC関連機器の製造を通して得たノウハウを活かし、産業PCや店舗端末などのインダストリアルソリューション、自立走行型ロボット、事業用サーバーの提供、移動体・車載エレクトロニクスなど、様々な分野に活躍の場を広げている

MSIでは、PC関連機器の製造を通して得たノウハウを活かし、産業PCや店舗端末などのインダストリアルソリューション、自立走行型ロボット、事業用サーバーの提供、移動体・車載エレクトロニクスなど、様々な分野に活躍の場を広げている

「冷却設計技術」、「一貫生産体制」と並び、MSIによるEV充電市場参入の理由を読み解く要素が、同社のAIoT事業だ。ゲーミングPCブランドとして知られるMSIだが、同社ではAIコンピューティングとハードウエア・ソフトウエアの高度な統合により、ユーザーの利便性を追求するAIoT事業を展開し、スマートファクトリーやスマートリテール、エネルギーマネジメントなど、さまざまな産業分野に対し、ソリューションを提供する事業にも注力している。

その事業範囲は産業用PCや店舗端末などのインダストリアルソリューション、自立走行型ロボット(AMR)、事業用サーバーの提供、自動車・商業向けソリューションに至るまで幅広く、今回取り上げたEV充電事業においても、充電器管理システム「MSI eConnect」のEV充電効率の最適化や、AIナンバープレート認識と連動した充電料金の支払機能などに活用されている。

2025年の世界新車販売台数における電気自動車(EV)比率は25%に達し、新車販売の4台に1台がEVという時代を迎えた。この急速な市場拡大に伴い、EV市場および充電事業は、成長産業として極めて高い将来性を秘めている。このような、EV産業の潜在的な市場価値というビジネス的背景は無視できないほどに大きい。

こうした市場環境がある中で、MSIは上場企業として自社の技術力を活かした環境面での社会貢献を社是として打ち出しており、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」の達成を目標としている。つまり、今回のEV充電事業への本格参入は、持続可能な社会の実現に対する同社の真摯なコミットメントの表れと取ることができる。

個人向けだけでなく法人向けの製品も含めてラインナップの拡大、自社開発のシステムだからこそできる技術の革新にも期待したい。

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