2026年7月9日、DJIはエベレスト(チョモランマ)山で3つのミッション、「高高度での物資輸送」と「氷河マッピング」、「気候研究」に成功したと発表した。

15年以上にわたりエベレストでの技術実証に取り組んできた

DJIは2006年に中国で創業した民生用ドローン会社。現在のドローン空撮のパイオニアとも言える企業で、持ち前の技術力を活かした高性能ドローンを比較的安価に提供することにより、現在では世界シェア7割を占めるまでに成長している。

画像: エントリーモデルでも4K・HDR動画に対応。6万円台で購入できる空撮用カメラドローン「DJI Mini3」。

エントリーモデルでも4K・HDR動画に対応。6万円台で購入できる空撮用カメラドローン「DJI Mini3」。

同社は、世界最高峰のエベレスト山においてドローン技術の限界に挑み続けてきた。たとえば、2009年に、自社開発のXP3.1フライトコントロールシステムを搭載した無人ヘリコプターを同山でテスト開始し、その1年後、DJI Ace One飛行制御システムは4700mを超える高度での運用に成功している。また、2022年にはDJI Mavic 3が山頂に到達し、標高8848mの頂上で史上初のドローン映像撮影に成功。そして2024年には、DJI FlyCart 30が南斜面のベースキャンプからキャンプ1までの山岳区間において、世界初のドローン配送試験を完了するなど、地道に技術レベルを向上させてきた。

今回の実証では、配送用モデル「DJI FlyCart 100」による「高高度での物資輸送」、測量用モデル「DJI Matrice 4E」による「氷河マッピング」、DJI初のeVTOL配送ドローン「EV50による」「気候研究」の3ミッションにトライし、そのすべてに成功したようだ。

高高度ドローン輸送により人力での輸送が不要に

「DJI FlyCart 100」は、最大100kgまでの荷物を海面高度で長距離輸送できる配送ドローン。現地ネパールのドローン企業Airlift協力のもと、ペイロード容量や伝送距離、RTK測位の精度、信号の安定性、氷点下の環境下でのバッテリー持続時間など、多くの性能が評価された。

試験では酸素ボンベやロープ、はしごなどの登山遠征用装備を含む最大47kgの荷物を、ベースキャンプと標高6300mを超えるベース1まで輸送。ミッション総計で10トン以上の物資と廃棄物が運搬され、そのうち登山用資材が7215kg、山から回収した廃棄物が2858kgだったという。

画像: 100 kgまでの荷物を海面高度で長距離輸送できる高容量・高積載の配送ドローン「DJI FlyCart 100」。

100 kgまでの荷物を海面高度で長距離輸送できる高容量・高積載の配送ドローン「DJI FlyCart 100」。

これまではシェルパ(ネパールのガイド・荷物運び人)たちが徒歩で6〜8時間かけて歩き、危険なクンブ氷河滝を超える必要があったのに対し、FlyCart 100であれば片道8分で輸送できるため、所用時間と人命リスクを大幅に削減。毎年約5000本の酸素ボンベを輸送するというネパール登山コミュニティの長年の目標達成や、山中に残されたごみの削減やサステナビリティ推進を目的としたネパール山岳協会の「Zero Waste Initiative 2027」への貢献が期待されている。

氷河の測量で登山ルートの安全確保に貢献

「DJI Matrice 4E」は、高精度測量、マッピング、土木建設など空間測量用途向けに設計された産業用ドローンで、2026年春の登山シーズンに、高解像度の氷河データ取得を目的とした試験が実施された。

画像: 空間測量用途向けに設計された産業用ドローン「DJI Matrice 4E」。

空間測量用途向けに設計された産業用ドローン「DJI Matrice 4E」。

標高6450m、気温マイナス20度を下回る過酷な山岳条件下、わずか3.5時間でベースキャンプから氷河崩壊地帯、さらにキャンプ1上部に至るクンブ・アイスフォールの主要エリア3平方キロメートル超をセンチメートルレベルでマッピングし、従来の測量に要していた時間を大幅に短縮。危険箇所のリアルタイム監視、より安全なルート設計、山中移動の迅速化、そして救助活動支援の強化に寄与した。

危険箇所の特定と共有に加えて、捜索救助活動においては雪に覆われた地形の中で人の位置を迅速に特定するという運用は、高高度遠征環境において世界的にも初期の事例であると言えるようだ。

高高度の大気汚染を測定し、気候変動研究に寄与

「DJI EV50」は、DJIブランド初となる大型eVTOL(垂直離着陸機)型配送ドローンで、超高高度対流圏における大気汚染物質の微細観測を行うテストに利用された。

北京大学環境科学与工程学院のオゾン測定機器を、チョモランマ国家級自然保護区の登山ベースキャンプから12日間で12回輸送し、複雑な風と過酷な飛行条件に対応するため、らせん状の上昇と往復飛行パターンで観測を実施。一番成功した飛行では、最大飛行高度8861mに到達し、連続上昇高度の最大値は3730mとなったという。

画像: DJIブランド初となる大型eVTOL(垂直離着陸機)型配送ドローン「DJI EV50」。

DJIブランド初となる大型eVTOL(垂直離着陸機)型配送ドローン「DJI EV50」。

今回の運用は、大学の研究者が高高度対流圏の観測にドローンを活用した初の事例とされている。

DJIは今後も研究、持続可能性、安全性の向上に貢献するため、現地のパートナーや登山コミュニティ、科学者たちと連携しながら、極限環境におけるドローン技術の可能性をさらに広げていく方針だ。


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