欧州のプライムタイムを意識した「放映権ビジネス」
フォーミュラEが東京のナイトレース化に踏み切ったのは、「欧州市場における放送時間の最適化」というもっともドライで経済的な理由である。これは、主催者であるFEOのグローバルな商業戦略に合致している。
モータースポーツ最大の熱源であり、莫大な放映権料と主要なスポンサーマネーが動くのは、依然として欧州市場だ。過去の東京E-Prixのように、日本の日中(午後1時~3時頃)にレースを開催した場合、欧州(中央ヨーロッパ時間)では早朝の午前5時~7時となってしまう。熱心なコアファンは別として、ライト層や一般的なテレビ視聴者をこの時間帯に惹きつけるのは不可能に近い。
FEOの共同創設者であり、最高チャンピオンシップ責任者を務めるアルベルト・ロンゴ氏は、グローバルでのテレビ視聴者数を確保し、参戦メーカーへの投資利益率を最大化するためには「欧州の主要視聴者がライブ観戦しやすい時間帯」に合わせることが不可欠であると公式に発信してきた。
レース開始時間を日本の夜(午後6時~8時)に設定することで、欧州では昼の午前10時~正午という、週末の「もっとも視聴者がテレビやデバイスの前にいる時間帯」にコンテンツをダイレクトに訴求できる。
グローバルにおける数億人規模の視聴者数を叩き出し、日産やポルシェ、ジャガーといった参戦メーカーの広告価値を最大化するため、東京の夜を走ることは必然の選択だったのかもしれない。
インバウンドを狙う東京都の都市戦略

東京都庁第一本庁舎(東京都新宿区)にて、「2026 TDK Tokyo E-Prix:フォーミュラE×TOKYO GX ACTION トークセッション」を開催され、フォーミュラ E CEO ジェフ・ドッズ氏と東京都知事 小池百合子氏が登壇。
ふたつ目の狙いは、開催地である東京都側の都市施策だ。小池百合子都知事は、東京を「ゼロエミッション・シティ」として世界にアピールする場としてフォーミュラEを誘致したが、東京都の公式プレスリリースや事業計画には、もうひとつの重要な目的が明記されている。それが「東京の魅力発信によるインバウンドの拡大」と「ナイトタイムエコノミーの活性化」である。
近年の東京観光における大きな課題のひとつが、夜間のエンターテインメントの拡充であった。近未来的なイメージを、現代のサステナブルなイメージとともにアップデートし、世界へ再発信したい。その東京都の思惑にフィットしたのが、フォーミュラEのナイトレースなのではないだろうか。
東京都はフォーミュラEを単なるスポーツイベントとしてではなく、世界中の富裕層や観光客を呼び込むための、費用対効果の極めて高い観光プロモーション施策として位置づけているのだ。

