2026年5月25日、フェラーリは新型電動車「Ferrari Luce(ルーチェ)」を正式発表した。2022年のキャピタル・マーケット・デイで示されたマルチエネルギー戦略の集大成となるモデルである。

ジョニー・アイブ氏が手がける新時代のEVがお披露目

電動化に対する考え方はメーカーごとにさまざまあるが、フェラーリは既存エンジンの置き換えではなく、製品アーキテクチャーや性能、デザイン、ドライビングエクスペリエンスを拡大する手段のひとつと位置づけてEVを開発、今回「Luce(ルーチェ)」を発表した。

この車名はイタリア語で「光」や「照らす」を意味する。未来への道を照らす存在として、深い一体感とパフォーマンス、唯一無二の個性を備えたフェラーリを目指した意欲的なモデルだ。決して、単なる「電動フェラーリ」ではないという。

画像: ブランド初のBEVモデルとして開発された。

ブランド初のBEVモデルとして開発された。

主要コンポーネントはマラネッロで一貫して設計・開発・製造され、電気モーターからバッテリーパックに至るまで社内生産を徹底。このプロジェクトでは60件を超える新規特許が出願され、「フェラーリ・フォーエバー」の哲学に基づき、バッテリーを含むすべての電動コンポーネントの長期サポートも保証されている。

デザインは元Appleデザイナーのジョニー・アイブ氏とマーク・ニューソン氏が率いるLoveFromに委託。外部からデザインチームを招くことで、新たな視点が導入された。LoveFromは、プロジェクトのデザインの方向性をゼロから定義する創造的自由が与えられ、フェラーリが持つ卓越した性能とラグジュアリーな空間を電動車で両立させるアーキテクチャーを実現したという。

画像: AppleでiPhoneやMacBookなど、さまざまなプロダクトデザインに携わってきたジョニー・アイブ氏がデザインを担当した。

AppleでiPhoneやMacBookなど、さまざまなプロダクトデザインに携わってきたジョニー・アイブ氏がデザインを担当した。

従来のエンジン車のパワートレーン構成であるフロントミッドシップとトランスアクスルでは、5シートが不可能なため、フェラーリ初の4ドア・5シート対応アーキテクチャーとし、広々とした室内空間を確保した。

エクステリアの最大の特長は、ベルトライン下までおよぶグラスエリアである。前後のウイングを浮遊させることで空力性能を高めつつ、シンプルで力強いフォルムを完成させた。前後ライトパネルは透明で、消灯時はフォルムに溶け込む設計。丸型テールライトは360モデナや458イタリアをオマージュしている。

インテリア素材には再生アルミニウム、コーニング社が開発した強化ガラス(ゴリラガラス)、プレミアムレザーを使用し、21スピーカー・24チャンネル/3000Wのオーディオシステムの搭載で、上質な空間が演出される。

インターフェースは機能性を重視し、スイッチ類やディスプレイは機能的にまとめられ、操作系とディスプレイはドライバーに向けて配置されている。機械式のボタンやメーター、トグルスイッチ類については、サムスンディスプレイと開発した多機能デジタルディスプレイと組み合わされる。

画像: 運転席周りのインターフェイス。Apple出身のデザイナーだが、自動車デザインでは物理ボタンを設置している点が印象的だ。

運転席周りのインターフェイス。Apple出身のデザイナーだが、自動車デザインでは物理ボタンを設置している点が印象的だ。

専用シャシとプラットフォームを採用して車両重量は2260kg。各輪に1基ずつ組み込まれた電気モーター(計4基)によりシステム最高出力は1050ps、0→100km/h加速2.5秒、0→200km/h加速6.8秒、最高速310km/h超、航続距離530km超というスペックを実現。122kWhの大容量バッテリー、F80由来のアクティブサスペンション、独立操舵式リアアクスルを搭載する。

あらゆる状況でも各輪を独立制御する技術とサウンドシステムは注目ポイントだ。各輪に駆動・回生・操舵・上下動のアクチュエーターを備え、リアルタイムでトルク配分を制御することで卓越した一体感を味わうことができる。また、車両メカニズムから生まれるリアルサウンドを活かし、自社開発の特許技術によりドライビング状況に応じた表現が可能となっている。

空気抵抗係数は同社ロードカー史上最小値を達成し、冷却機能と空気抵抗のバランスをとって熱交換器に入る気流を制御するアクティブエアログリル、高速走行時にフロントを10mm下げるアクティブライドハイトなどを搭載する。

電動でもフェラーリらしさを追求

一般的に、EVには強烈な加速を瞬時に発生させるという電動パワートレーン特有の性質があり、発進時には不快感にさえ感じられる加速感覚を得られても、加速が増すにつれて変化がなくなってしまう。

この課題に対して、フェラーリは独自の特許システムを開発。右側のステアリングパドルを操作すると利用可能なトルクを増やして漸進的な加速感が続く一方、左側のパドルを操作すると、エネルギー回生と減速感を高め、同クラスで比肩するもののないダイナミックな体験をもたらす。

シャシは中空鋳造部品、押出材、アルミニウムで構成され、ボディには押出材とアルミニウム板材を使用。センタートンネルをなくし、バッテリーをフロアと後席の下に一体化することで、室内空間を確保した。また、弾性支持式リアサブフレームの高い最適化/統合により、フェラーリらしいハンドリングと快適性に優れた乗り心地を両立させている。

画像: センタートンネルがないので、後席足元空間が広い。

センタートンネルがないので、後席足元空間が広い。

ちなみに、バッテリーケースは剛性にも大きく寄与しており、曲げ剛性とねじり剛性は格段に向上しているという。

ルーチェは電動車という新たな章の幕開けを告げるモデルである一方、妥協なき革新と走行性能を追求してきた、フェラーリの長い歴史の延長線上にあるモデルというでもある。フェラーリらしさを再定義する意欲的な1台として、今後注目されていくことになるだろう。

【ルーチェ 主要諸元】
全長×全幅×全高 :5026×1999×1544mm
ホイールベース :2961mm
車両重量 :2260kg
最高出力 :772kW(1050ps)
最大トルク :990Nm
バッテリー総電力量 :122kWh
WLTCモード航続距離 :530km
駆動方式 :AWD
タイヤサイズ :前265/35R23、後315/30R24

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