荷物の輸送専用の新幹線が登場
JR東日本グループは、「勇翔2034」で掲げたライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)による「地域に活力をもたらし豊かな日本に」を実現するため、新幹線や在来線による列車荷物輸送サービス「はこビュン」を活用して、地域の魅力発信や地域経済の活性化を推進していく方針を掲げている。
はこビュンは速達性・定時性に優れ、環境にも優しいという鉄道の強みを活かし、JR東日本グループが展開している荷物の輸送サービス。
2025年4月から臨時列車の一部客室を使用した大口輸送サービスを開始して、毎週金曜日に新青森・東京間を行き来。車両は東北新幹線のはやぶさ50号(E5系10両編成)で、1号車と2号車を改造せずに荷物専用車両として運行している。
同サービスでは120サイズの箱を最大200箱ほど輸送できるが、より多くの荷物を高頻度で輸送してほしいというニーズに応え、今回E3系新幹線1編成の全号車を荷物専用車両として改造したのだという。
こうして誕生した「荷物専用新幹線」は、2026年3月23日から盛岡新幹線車両センターと東京新幹線車両センターの間で平日に定期運行されることになる。
運行時はE5系「やまびこ」と連結して走行し、旅客輸送1~10号車(やまびこ)・荷物輸送11~17号車(荷物専用新幹線)として、正午前に盛岡新幹線車両センターを発車、16時頃に東京新幹線車両センターに到着するダイヤを予定している。

荷物専用新幹線での輸送の流れ。
一般の駅ホームではなく、車両センターを活用することで乗客との接触事故を避けられるほか、カゴ台車のまま一度に多量の荷物を輸送することもできるで、AGV(無人搬送車)の導入で作業効率化も実現する。
また今後は、車内電源を活用した冷温管理機器(業務用クーラーボックス)による冷蔵品の輸送ほか、仙台エリアや新潟エリアなど他地域への輸送も目標としている。
車両デザインは「はこビュン」の広告宣伝も
荷物搭載スペースを確保するため座席はすべて撤去。荷物を載せたカゴ台車ごと車内に搭載するため、床面をフラット化した上で鉄板を敷設。滑り止め加工を施して、車内に設置したベルトで荷崩れも防止するなど、積載車両としての性能を高められている。
こうした改装により、積載量は最大17.4トン(1000箱程度)となっており、従来の「はこビュン」(毎週金曜日に最大200箱程度)と比較すると、1週間あたり最大約25倍の輸送力アップとなる見込みだ。

座席はすべて撤去されており、荷物をカゴ台車に載せたまま車内に搭載して輸送する。
なお、外装も特別仕様となっており、JRの鉄道ネットワークを活かし、地域の商品・魅力を輸送するサービスであることを全面に押し出した荷物専用新幹線の特別デザイン。先頭車は代表的な輸送商材を大きくデザインし、中間車の窓に輸送実績のある地産品が描かれて、「はこビュン」の広告宣伝の役割も担う。

専用の外観デザインで、荷物専用新幹線であることをアピールしている。
他事業者連携で輸送ネットワーク・輸送サービスを拡大
JRは他の事業者との連携を通じて、ネットワークやサービスを拡大し、さらなる産業振興や交流人口増加を推進して地方創生、社会課題の解決を目指す方針だ。
JALグループと連携した新サービス「JAL de はこビュン」では、地域から海外までワンストップで輸送する新しい物流サービスを商品化。新幹線・航空機での輸送及び通関手続きをワンストップで行うことで各地域から目的地まで迅速に荷物を届け、日本各地の優れた地産品のさらなる海外輸出拡大を狙っている。
JAL de はこビュンの輸送対象エリアはシンガポール、マレーシア・クアラルンプール、台湾・台北、中国・香港で、2026年1月中旬からスタートする見込みである。

新幹線×航空機の組み合わせで、超速達を実現しようとしている。
JALのほかにも、日本郵政グループと協業して持続可能な物流の実現を掲げており、両社で「物流のリ・デザイン」実現を目指すとしている。

