世界唯一の曲線エスカレーター「スパイラルエスカレーター」
スパイラルエスカレーターは、三菱電機ビルソリューションズ(以下、三菱電機)が製造している曲線型のエスカレーターである。曲線型エスカレーターは技術的難易度やメンテナンスコストが高いため、現状では世界で唯一、三菱電機のみが実用化に成功している。
1985年にスパイラルエスカレーターを世界で初めて開発して以来111台が製造されており、現在では製造後30年以上が経過した機器も多くなってきたため、リニューアル需要の増加が見込まれている。

メキシコのサンタ・フェにある商業施設「リベルプール」向けのスパイラルエスカレーター、リニューアル後の写真。
特殊な曲線構造を持つスパイラルエスカレーターは、設計から製造、設置に至るまで高度な技術とノウハウが必要であり、今回の工事は新規設置とは異なる解体や調整作業を含む初の挑戦となった。熟練技術者が先導し、技術伝承を進めながら工事を完遂した。
今回リニューアル工事を行ったのは1992年に納入されたメキシコ国内に現存する2台のうちの1台で、メキシコの商業施設「Liverpool(リベルプール)」に設置されているもの。メキシコでの昇降機販売を担う三菱電機メキシコ社が主要部品の交換を行い、安全性や信頼性を向上させるとともに、新規機能や意匠を導入することで省エネ性やデザイン性も高められている。
三菱電機は、今後も唯一無二の存在であるスパイラルエスカレーターを高品質な保守やリニューアルとともに提供し、世界中で安心・安全・快適な利用に貢献していく方針だ。
リニューアル製品・工事の特徴
1.世界初、スパイラルエスカレーターのリニューアル工事を実施し、製品の安全・安心な継続稼働に貢献
スパイラルエスカレーターのリニューアル工事に成功。主要部品(制御盤、ドライブユニット、安全機器等)を交換し、建物の中心的存在であるスパイラルエスカレーターの安全・安心な継続稼働を実現した。
2.新規機能や意匠を適用することで、省エネ性やデザイン性の向上を実現
停止待機自動運転機能を新規に導入。センサーでエスカレーターの利用者を検出し、利用者がいないときには自動で運転を停止させることで無人時のエネルギー消費を削減し省エネを達成した。
また、ポリカーボネート製の既存側板パネルをガラス素材のパネルに交換し、プラスチック素材特有の日焼けなど老朽化の影響を軽減するとともに意匠性を向上させているほか、省エネ性やデザイン性を高めることで、建物価値向上にも寄与している。

ポリカーボネート製の既存側板パネルをガラス素材に交換することで、日焼けなど老朽化の影響を軽減するとともに意匠性を向上した。
3.施工条件や構造上の課題を熟練技術で克服し、安全・高品質なリニューアルを実現
営業中の施設で現場の作業スペースに制約があり、既設部品の撤去作業にスペース確保の困難性があったものの、現地で部品を吊り上げるクレーンやぐらの設置位置の変更や組み換えを何度も実施することにより作業を完遂。
側板パネルや意匠部品の取り付け作業では、スパイラルエスカレーター独自の曲線デザインゆえにズレや隙間が発生しやすい課題に対し、現地で部品を削るなど熟練工の経験を活かしながら、ミリ単位での細やかな調整を実施した。
今回のリニューアル工事を通じ、スパイラルエスカレーターのリニューアルに関する技術・技能を次世代へ確実に継承・共有することで、今後のリニューアルニーズへの対応体制を強化。

