2025年11月12日、花王のテクノケミカル研究所は、植物原料から機能性を備えたパラフィンオイルの開発に成功したと発表した。同社は今後、データセンター向けの冷却液や潤滑油などへの応用を目指す方針だ。

植物由来のエンジンオイルが実現するかも

パラフィンオイルは炭素と水素のみで構成される炭化水素系の油で、化学的に安定した性質を持っていることから、医薬品から工業用まで幅広い用途に応じた様々な種類が開発されている。

パラフィンオイルの製造に植物原料を使用することは化学構造の制御や精製工程の複雑さなど、技術的な課題が多く、従来は石油精製や石化原料を用いた化学合成によって製造されることが主流であった。

一方、花王は、アブラヤシの実から得られる固体油脂をオレフィンに変換し、そこから洗浄用界面活性剤「バイオIOS」を製造する技術を確立している。

今回はこの技術を応用し、植物由来のオレフィンをパラフィンオイルの原料として利用できるかどうかの研究が行われた。ただし、中間原料のオレフィンを単にパラフィンオイルへ変換するだけでは、引火点が低く、流動性も悪いため、実用的なパラフィンオイルとしては性能不足となってしまう。

そこで、花王は界面活性剤研究で培った技術を活かした独自の触媒を用いることで、炭素鎖の長さや形状を自在に制御し、引火点や粘度、流動性をコントロールできるようにした。また、変換のプロセスも制御できるようになったことにより、成分のばらつきが大きい植物原料でも安定した品質を実現しているという。

画像: 一般的な潤滑油との摩擦係数の比較図。

一般的な潤滑油との摩擦係数の比較図。

花王は今後、今回開発したパラフィンオイルをデータセンター向けの冷却液や潤滑油、プロセスオイルなどへの応用を目指しているほか、工業用途以外への応用可能性も模索するとしている。

【花王が開発した植物原料由来のパラフィンオイルの特長】
高引火点
引火点が250℃以上と高く、特別な対策を必要とせず安全に取り扱えるため、データセンターの冷却液などに応用可能。
優れた粘度特性
広い温度範囲にわたって低粘度を維持できる。機械や自動車エンジンの潤滑油や冷却オイルとして用いた場合、ポンプへの負荷を軽減し、燃費やエネルギー効率の低下抑制に寄与する。
高潤滑性
潤滑油として用いた場合、金属表面に強固な油膜を形成し、高い潤滑性能を発揮する。金属部品間の摩擦を減らし、部品の長寿命化やメンテナンス頻度の低減が期待できる。

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