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【解説記事】立ち乗りOKな電動車いす?移動用小型車とは
四輪の安定性×バイクの操作性がもたらす利便性に注目
実際にシートに腰掛けてみると、前傾での乗車姿勢とバーハンドルの組み合わせにより、傾かない(バンクさせない)バイクに乗っているような気分になる。クッション性に優れたシートは座り心地よく、左右に滑り落ちてしまわないようにサイドサポートが設置されているのも嬉しいポイントである。
発進手順は、
①ハンドルの下、バッテリー部分にあるボタンから電源を入れて、キーを差し込み右に回す
②ハンドル左側のブレーキレバーを握る
③ブレーキレバーを離し、アクセルグリップをひねって前進する
という3ステップで完結する。

ハンドルポストのバッテリー部分にあるボタンを押すと、車両の電源がオンになる。
操作方法は基本的に電動バイクと同じ。ただ、アクセル(スロットル)が自動車で言うところの「ワンペダル」式の操作であるため、走行中アクセルオフにすると回生ブレーキがかかって停車する仕様となっている。
そのため、ハンドル左側のみに採用されているブレーキレバーは、緊急時や停車時以外で使う機会は少なそうだ。また、メーターディスプレイ下の「+/−」ボタンを操作することで、フルスロットル時の最高速を1〜6km/hの範囲で変更できるようになっている。

ハンドルバー周辺のレイアウトはシンプルなので、誰でも簡単に操作できるだろう。右側にある後退ボタンを押すと1km/hでバック走行できる。
最高速の6km/hといえば歩行者にとって「早歩き」のレベルで、屋内で走行するには少し速い速度。それでも、スロットル操作に対してリニアにモーターが反応してくれるので、軽快で楽しさもある。
その一方で、レスポンスが良すぎるあまりスムーズな発進・停止は難しい。人どおりの多い繁華街やショッピングセンターのような屋内施設を走行する場合は、最高速設定を変更するなど安全への配慮が求められるだろう。
ちなみに、ダイハツ e-SNEAKERも含めたシニアカーは、道路交通法上「歩行者」として扱われるモビリティであるため、クルマやバイクのようにウインカーやテールランプは搭載していない。
自転車と同様に他者に方向転換の意思を表示する装備がないので、交通量の多い歩道や路側帯を走行するときは、手信号で意思表示したり交通環境に注意するなど周囲の歩行者と共存するための努力が必要だ。

点灯・消灯を切り替えられるヘッドライトは搭載するが、テールランプではなくリフレクターを搭載している。
駆動用モーターは定格出力250Wのモーターをリアの左右輪にそれぞれ搭載して直接駆動する。このふたつのモーターにより、ショッピングモールにあるような立体駐車場スロープと同等の10度まで登坂できるという。
なお、シニアカーはパンク防止目的でエアレスタイヤ装着モデルも多いが、e-SNEAKERは乗り心地重視でエアタイヤを採用している。しかも前後サスペンションやふかふかのシートも備えているので、段差の乗り越えでも、衝撃を吸収しながらスムーズに安定して走行可能だ。
正面から進入すれば、最大7.5cmの段差、最大10cmの溝は乗り越えられるというので、歩道と車道の境にある段差や道路のちょっとした溝であれば、問題なく通過できるようになっている。

エアタイヤとサスペンション機構の組み合わせにより、段差の乗り越えもスムーズに行える。
駐車やルートミスしたときの方向転換用に後退(バック)機能も標準装備されており、アクセルグリップ横のスイッチを押すことで、最高1km/hでバック走行できるようになっている。視界を遮るものが何もない車両であるメリットを活かして、周囲をよく確認しながら使って欲しい。
ハンドルステムの下に配置された駆動用バッテリーは車体に装着したままの充電できないものの、脱着できるうえ重量2.5kgと軽量なので自宅内への持ち運びはしやすい。付属の専用充電器で家庭用コンセント(AC100V)に接続して約2.5時間で満充電になり、航続距離は12kmとなっている。最高速6km/hであることも踏まえ、あくまでも「歩行領域を拡張する移動手段」として利用するのが最適だろう。

バッテリーは小型、かつ2.5kgと軽量なので、充電時の持ち運びストレスは少ないだろう。
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