2025年3月17日、ルノーはハイパフォーマンスEV「サンク(5)ターボ 3E」の予約受付を数週間以内に開始すると発表した。オリジナルの5ターボが発売された年にちなんで1980台が限定生産され、販売予定地域には、欧州、中東、豪州などに加えて「日本」も記されている。かつてWRCを席巻した名車が100%電気駆動車として復活するだけに、世界中から予約が殺到しそうだ。

WRCで勝つために生まれた名車がEVで蘇る

1980年に登場した「サンク(5)ターボ」、そして1982年に投入されたエボリューションモデル「サンク ターボ2」。世界ラリー選手権、WRCにフォーカスしたゆえ、サンクの名を冠しながらも中身はオリジナルとは別物だった。

前輪駆動から一転して、ターボ過給による強力なエンジンは後席スペース(リアミッド)に搭載され、後輪駆動に改められた。随所にオリジナルサンクの面影は残すものの、車体構造からしてまったく異なる「ラリーで勝つために生まれたクルマ」である。これが市販され、しかも、この手のクルマとしては少なくない数が売れたのは、いま思えば驚きだ。現在もコレクターズカーとして現存している車体は多い。

画像: 往年のサンクターボ(ラリー仕様)。リアミッドシップ+後輪駆動でリアセクションはフレーム構造。オリジナルサンクとは別物だ。

往年のサンクターボ(ラリー仕様)。リアミッドシップ+後輪駆動でリアセクションはフレーム構造。オリジナルサンクとは別物だ。

そんなサンクターボが再び世間の耳目を集めたのは、2022年9月に開催されたパリモーターショーでのこと。そこでルノーは、サンクの生誕50周年を祝う特別なコンセプトモデルとして「ルノー サンクターボ 3E」を世界初公開するとともに量産計画をほのめかした。

2024年12月13日にオンライン配信されたドキュメント動画番組では、その量産モデルの開発過程がレポートされるとともに、量産モデルの外観」写真も公開された。まさか、本当に発売するつもりなのでは? と期待が膨らむなか、今回、ついにその詳細が明かされたのだから、ファンならずとも胸躍るに違いない。

インホイールモーターほかスペシャルな技術のオンパレード

興味深いのは、現代においてもかつてのサンクターボと同じ開発手法が用いられているところである。つまり、サンクの名を冠してはいるが、現行のサンクE-TECHエレクトリックとの共通点はごくわずか。イメージを共有しているのはサイドミラーやリアコンビランプくらいだ。

画像: サンクE-TECHのイメージを残すのはリアコンビランプとサイドミラーくらい。フロントウインドーの立ち上がる位置も異なる。

サンクE-TECHのイメージを残すのはリアコンビランプとサイドミラーくらい。フロントウインドーの立ち上がる位置も異なる。

ボディサイズは、全長4080mm×全幅2030mm×全高1380mm。サンク E-TECHエレクトリックと比べると、160mm長く、260mmも幅広で、120mm低い。ホイールベースは2570mmでこちらも30mm長い。フロントガラスの立ち上がる位置(Aピラー)さえ異なっており、これが低い全高を可能にしているようだ。ちなみに最小全長/全幅比は2.01と発表された。ルノーはこの特異なディメンジョンを、シティカーの長さとスーパーカーの幅を兼ね備えた「小さなスーパーカー(MINI-SUPERCAR)」と呼んでいる。

プラットフォームの開発はアルピーヌが担当。アルミ製の後輪駆動EV専用プラットフォームであり、将来の電動A110クーペ(後継車)にも採用されることが予想される。

画像: 縦横比はほぼ2:1というユニークなプロポーション。

縦横比はほぼ2:1というユニークなプロポーション。

パワートレーンにも最先端技術が惜しみなく投入されている。そのハイライトは後輪左右を別々に駆動するインホールモーターの採用だ。それぞれ200kW(約272ps/合計540ps相当)を発生し、サンクE-TECHエレクトリック(52kWh仕様)と同等の1450kgという軽量な車体を、完全な停止状態から3.5秒未満で100km/hまで加速させる。最高速は270km/hだ。

フロアのセンターに配置される70kWhのバッテリーは800Vオペレーションを採用し、350kW出力のDC急速充電に対応。航続距離は最大で400km、15分以内でSOC15~80%を実現するなどEVとしての基本性能も高い。もちろん、双方向充電(V2LおよびV2G)にも対応している。

ボディ構造は、上述のアルミプラットフォームに加え、キャビン部をカーボンで製作。これがわずか1450kgという軽量化に貢献している。乗車定員はターボ/サンクターボ2と同じく2名だが、エレクトロニクスのほとんどをホイールベース内に配置しているため、そのユニークな外観に対して積載スペースが十分に確保されているのもユニークだ。

レーシーかつ最新テクノロジーが採用されたインテリア

インテリアは、これがEVであることを忘れさせるほどレーシー。バケットシートと6点式ハーネス、シートとダッシュボード用のアルカンターラなどの高級素材も惜しみなく採用されている。そして極めつけが、ラリースタイルの垂直ハンドブレーキだ。また、ステアリングホイールには、追い越し時に活躍するパワーブーストボタンのほか、回生ブレーキ量を4段階で切り替えられるボタンも採用。ほかにも後輪左右のインホイールモーターを制御する各ドライビングモード(スノー/レギュラー/スポーツ/レース)も選択できる。

画像: コクピットと呼ぶにふさわしいレーシングマシンさながらのインテリア。ラリースタイルの垂直ハンドブレーキ、バケットシート、6点式ハーネスベルトほかマニア垂涎のアイテム群が採用されている。

コクピットと呼ぶにふさわしいレーシングマシンさながらのインテリア。ラリースタイルの垂直ハンドブレーキ、バケットシート、6点式ハーネスベルトほかマニア垂涎のアイテム群が採用されている。

この小さなスーパーカーは、ボディ色/内装色ともに用意されたバリエーションを組み合わせて、自分だけのユニークなクルマに仕立てることができるという。さらに、顧客は注文時にシリアルナンバーを指定することも可能なのだとか。納車開始は2027年から。気になるのは価格だが、本稿執筆時点では情報はまだない。興味のある方は、ルノーの本国サイトをまめにチェックしたほうが良さそうだ。

ルノー サンク ターボ 3E 主要諸元

・ボディサイズ:全長4080×全幅2030×全高1380mm
・ホイールベース:2570mm
・最低地上高:118mm
・車両重量:1450kg
・駆動方式:RWD
・モーター最高出力:200kW(272ps)×2 ※インホイールモーター
・バッテリー容量:70kWh(800Vアーキテクチャー)
・航続距離:400km以上(※WLTP申請中)
・0→100km/h加速:3.5秒未満
・最高速:270km/h

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