2025年1月20日、大手総合商社の「双日」、米「BETA Technologies Inc.(以下、BETA)」、「ヤマトホールディングス」、北九州市の四者は、北九州空港を拠点とした電動航空機による貨物輸送の共同検証に基本合意した。BETA社製eCTOL(電動固定翼機)の「ALIA CTOL」と呼ばれる小型電動航空機を使用して、経済合理性や貨物の搭降載などの運用面、充電設備などの技術面の検証を行う。(タイトル写真はBETA社製eCTOL「ALIA 300X CTOL」)

eVTOLではなくeCTOL。物流の多様化が始まるかもしれない

eCTOL(シートール)とは、一般的な航空機のように滑走路を使って離着陸を行う小型の電動航空機のこと。垂直方向に離発着するeVTOL(ブイトール)と見た目は似ているが、構造的に異なる。今回、実証実験に使用される予定のeCTOLは、BETA社が開発した「ALIA 300X CTOL(アリア 300Xシートール)」。

画像: eVTOLのように垂直離着陸ではなく滑走路が必要だが、560kg以上の荷物を運ぶことができる。宅配便の中型トラックに相当する運搬能力だ。

eVTOLのように垂直離着陸ではなく滑走路が必要だが、560kg以上の荷物を運ぶことができる。宅配便の中型トラックに相当する運搬能力だ。

翼長50フィート(約15.24m)とコンパクトで、貨物積載量は560kg以上、乗員5名まで搭乗することもできる。ジェット燃料を使用しない完全電動機ながら、航続距離は約400km以上、充電にかかる時間もおよそ1時間と経済性も高そうだ。宅配便の中型トラックのようなイメージである。

画像: 荷物を運ばない時にはパイロットを除き最大5名の乗客が搭乗することも可能だ。

荷物を運ばない時にはパイロットを除き最大5名の乗客が搭乗することも可能だ。

実証実験は、北九州空港を拠点として目的地まで荷物を運ぶ、いわゆる「2地点間飛行」を通じて、スピード輸送による地方創生や物流における脱炭素化の実現、地方・離島向け物流ネットワークの強化など、持続可能な物流網の構築を目指すという。実証開始は2025年夏を予定しており、電動航空機による貨物輸送を想定した2地点間飛行としては、日本初となる見込みだ。

4社の強みを活かした物流改革の実証に期待大

4者による共同検証に至った背景にあるのは、日本の物流業界における危機的な状況だ。国内で排出されるCO2排出量のうち輸送業界が出すそれは全体の18.5%を占めている。また、人手不足や過疎化など問題は山積している。陸送部門では電動化および自動運転レベル4を想定した長距離輸送の実証実験が先行しているが、空の輸送に関しては遅々として進んでいなかったのが現状だ。

CO2排出量の削減とともに、過疎化が進行する地方・離島における物流ネットワークの維持などの課題解消に向けて早急の対策が求められている。今回、4者は以下の役割分担を行うことで、電動航空機の有効性を実証していく。

・双日は、機体の国内での使用や試験飛行に向けた諸手続きなどの検証全体のコーディネートに加え、今後、機材を国内に導入するために必要な体制の構築をBETAと連携して推進する。
・BETAは、機体の提供に加え、機体・充電インフラの運用や効率的に貨物輸送するためのアドバイス、試験飛行の運航オペレーションなどを担当。
・ヤマトHDは、貨物輸送に関するオペレーションのアドバイスを行う。
・北九州市は本実証実験を進めるうえで必要となる北九州空港を拠点とした各インフラや関係官庁との調整を支援する。

なお、今回の実証実験は、今夏より北九州空港と宮崎空港の2地点間で試験飛行を実施する予定だ。

画像: BETAは急速充電器も自社開発。約1時間で満充電できる。

BETAは急速充電器も自社開発。約1時間で満充電できる。

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