クアッドモーターによる、ノイエ・クラッセモデルの究極
「次世代Mの電気自動車には、すべてクワッドモーター(4モーター)のEVシステムを採用します」と語るのは、BMW Mの車両開発総合責任者であるカーステン・ウルフ氏。「4つの車輪がそれぞれ独自の電気モーターで駆動するという事実は、まったく新しい可能性を開きます。ミリ秒単位で、自発的に反応する電気モーターの出力とトルクを、従来の駆動システムでは達成できない精度で制御できます。今日では想像もつかないような前例のない性能、品質、機能を提供します」と期待を煽る。
上述のように、次世代のMモデルはiX3や次期3シリーズと同じく次世代E/Eアーキテクチャーをベースに構築される。iX3はすでに量産試作車がラインオフされ、2025年後半の量産開始に向け着々と準備が進められている。
次世代パフォーマンスEVは正式発表まで道半ば。だが待つ甲斐はありそうだ
クワッドモーターの詳細について語るのは、BMW Mの開発責任者を務めるディルク・ヘッカー氏だ。動画はプロトタイプの試乗を終えたヘッカー氏がインタビュアーの質問に答えるかたちで収録されている。その中から特に印象に残る回答を抽出してみた。
●4輪に独立してブレーキをかけることが可能
「クアッドモーターシステムは、単に個々の車輪が推進力を生成するだけでなく、他の車輪とは独立してブレーキをかけることができることを意味します。これにより、ドライバーの意思をこれまで以上に正確に、より速く、より独立して、そして素晴らしいパワーで実現することができます」
●類のない統合制御アルゴリズムを開発
「従来の駆動技術では不可能です。そこで我々は新たな統合制御アルゴリズムを開発しました。このドライビングコーディネーターを中心点として、個々の電動モーター、つまりさまざまなドライビングシチュエーションにおけるそれぞれのホイールの理想的な動力伝達を計算できるようになったのです」
●強大な回生エネルギーをコントロールする先進のバッテリー技術
「モーターを4基も搭載することによって、そこから得られる回生エネルギーも膨大になります。バッテリー技術は全速で加速する際の急激なエネルギー放出に加えて、瞬間的なエネルギー吸収にも対応できる必要があります。つまり、我々の思い描くパフォーマンスの実現には、モーターの制御だけではなくバッテリーマネジメントでも卓越した技術を発揮できなければなりません。幸い我々はBMWグループ内の豊富な経験の蓄積が利用できます」
●サーキットでも内燃機関Mモデルを凌ぐ性能の達成が目標
「もちろんレーストラック(サーキット)でも、現在のMモデルを凌ぐ負荷に耐えうることが目標です。その能力がなければ、本物のBMW Mと呼ぶことはできません。モータースポーツの世界、とくに距離距離の短いレースでは、すでに従来のドライブではまったく勝ち目がないところまで来ています。全電動パワートレーンが主導権を握る日は近いでしょう」
開発中の全電動Mモデルの発売時期について尋ねられたヘッカー氏は、「残念ながら、まだ注文は受け付けていません。車両が量産できるようになるまでには、もう少し時間が必要です。しかし、私たちが作るものは特別なものになることを約束します。待つ価値はあるでしょう」と答えている。
恐らく2027年から2028年あたりになると思われる。とは言え、それが次期M3とM4(i3M?とi4M?)になることは間違いなさそうだ。なお、この2モデルにはガソリンエンジンを搭載したハイブリッドモデルの存在も囁かれており、そちらの動向も気になるところではある。
今回の動画には「episode 1」というサブタイトルが付けられており、近日中には続編のアップも期待できそうだ。さて、次はどんなトピックが語られるのだろうか。