タッチ決済=キャッシュレス時代の移動を下支えする決済ソリューション
ステラトランジット(stera transit)とは、三井住友カード、GMOペイメントゲートウェイ、GMOフィナンシャルゲートおよびVisaが共同で構築し、三井住友カード株式会社が提供する公共交通機関向けの決済ソリューションのことだ。
いままで普及していたSuicaやPASMOなどのICカードは事前のチャージが不可欠だったが、ステラトランジットの導入によりクレジットカード各社と連携した非接触決済(いわゆる「タッチ決済」)による後払い方式が可能になった。2020年7月に茨城交通高速バスで国内初導入され、2024年10月時点で31都道府県、104社(うち大手私鉄16社、公営地下鉄8社)に採用が急拡大している。三井住友カードでは、2025年末までに70%の利用率を目指している。
利用方法は実に簡単だ。タッチ決済対応のクレジットカード/デビットカード/プリペイドカード、またはカードが設定されたスマートフォンを改札機や車内設置された専用リーダーにかざすだけ。専用の事前登録は不要だ。すでに世界の主要都市では、タッチ決済による交通利用が普及している。
日本でも飲食店やスーパー、コンビニなどでキャッシュレス決済の利用が普及し始めたが、公共交通機関への導入が始まったことで本格的なキャッシュレス社会、ひいては近い将来のMaaS(Mobility as a Service)の実現やスマートシティの認証基盤にも活用が広がっていくだろう。
なぜこのタイミングで普及が始まった? ちょっと意外な背景も存在
公共交通機関のキャッシュレス決済は、海外ではすでに当たり前のように使われている。「インバウンド受け入れ環境の整備」や「地域のキャッシュレス決済促進」などを理由に日本でもようやく始まったが、その背景には鉄道・バス事業者の事情も関係していると言われている。
実は現在のICリーダー付改札機が一斉に更新時期を迎えているのだ。この改札機が曲者で、メインテナンスや紙の切符の回収をはじめとした日々のランニングコストが非常に高い。一般利用者が想像する以上に手間とコストがかかる装置なのだ。
それが更新時期を迎えており、キャッシュレス決済の普及、インバウンドの急増も重なり、もはや導入しない理由が見つからなくなった。加えて、デジタルデータが一元的に管理・蓄積されることで、人流や利用者数の把握(乗降データ)など運行管理や企画券や割引券の発行などサービス向上、マーケティングへの利用も促進できる。さらには、現金を扱う券売機や乗越精算機も不要になるなど、利用者だけでなく事業者にとっても多大なメリットがあるのだ。
最新の導入事例では、2024年12月4日から、横浜市市営地下鉄が首都圏・東日本の地下鉄として初めて実証実験を開始した(実証実験の期間は2027年度末までを予定)。ブルーライン、グリーンラインの全40駅で実施され、各駅に専用リーダーを設置した自動改札機を各改札口に1台設置している。
東京メトロや都営地下鉄(一部)ほか東日本エリアでも実証実験の開始発表が相次いでおり、すでに導入している大手に続き、鉄道各駅での利便性が急速に高まる。MaaS社会の到来は近そうだ。
【参考:導入事例(一部導入および実証実験期間を含む2024年11月現在】
■北海道:北都交通、北海道バス・千歳相互観光バス・エルム観光バス、北海道中央バス、道北バス
■東北:岩手県北バス、会津バス、福島交通、羽後交通、仙台市(るーぷるバス)
■関東:茨城交通、京急バス、西武バス、西東京バス、なの花交通、横浜市交通局、江ノ島電鉄・江ノ島バス、川崎鶴見臨港バス、小湊鉄道、日東交通、箱根ロープウェイ・箱根海賊船、東急電鉄、京王電鉄、神奈川中央交通、小田急バス、京成バス、高尾登山鉄道電鉄、関東バス
■北陸:京福バス、新潟交通、越後交通、頸城交通、アイケーアライアンス、蒲原鉄道、富山地方鉄道、北陸鉄道、北鉄加賀バス、加越能バス
■東海:長電バス、アルピコ交通、長良川鉄道、富士急バス・富士急モビリティ、名古屋鉄道、草軽交通、遠州鉄道、西武観光バス
■関西:京都丹後鉄道、南海電鉄、南海りんかんバス、南海フェリー、泉北高速鉄道、神姫バス、奈良交通、神戸市交通局、神戸電鉄、神戸新交通、神戸六甲鉄道、大阪モノレール、まやビューライン・六甲有馬ロープウェー、Osaka Metro、近畿日本鉄道、阪急電鉄、阪神電鉄
■中国・四国:広島電鉄、広島バス、広島交通、芸陽バス、中国ジェイアールバス
■九州・沖縄:福岡市地下鉄、西日本鉄道(電車・バス)、西鉄バス北九州、JR九州、熊本市交通局、九州産交バス・産交バス、南国交通、鹿児島市交通局、沖縄バス、カリー観光、西表島交通、名護市、東京バス、東運輸、那覇バス、琉球バス交通