2024年11月9日、AstroX株式会社は福島県南相馬市の沿岸部にて、高度10 km級のハイブリッドロケットの発射実験に成功した。ロケットは千葉工業大学と共同開発したハイブリッドロケットエンジンを搭載しており、サブオービタル(地球を周回する軌道に乗せるのではなく、放物線を描いて飛ぶ弾道のような飛行)打ち上げに使用する全長6.3mの機体だ。

空中発射型ロケットは低コストであることがメリット

ロケットは地上から発射することが一般的だが、地上発射では大型ロケットの運用が可能な代わりに、地球の自転速度を利用して燃料の節約をするために赤道に近い場所であることが望ましく、発射設備などを備えた大規模な射場である必要があるなど、立地面、コスト面の制約が厳しいというデメリットもある。

一方、ロケットを高空まで運び空中から発射する方式では、母機からの発射という関係上大型のロケットを運用できない代わりに、地上設備への投資が少額で済み、立地の制約も少なく、より宇宙に近い場所からの発射で燃料の節約ができるため小型・低コストでの運用が可能などのメリットがある。

画像: 気球に発射ランチャーを取り付けて、空中からロケットを発射するのが「ロックーン方式」だ。

気球に発射ランチャーを取り付けて、空中からロケットを発射するのが「ロックーン方式」だ。

AstroXは2022年創業の宇宙スタートアップで、前述の空中発射方式の中でも例が少ない、気球で成層圏までロケットを放球し、そこからロケットの空中発射を行う「ロックーン(Rockoon) 方式」と呼ばれるロケット発射方式の実用化を目指して研究開発を進めている。

ロックーン方式とは「ロケット(Rocket)」と「気球(Baloon)」を組み合わせた造語で、航空機からの発射と比べて、ペイロードが小さくなる代わりに、圧倒的に安く、より高空から発射できるのが特長だ。

創業2年の日本メーカーによるロケット開発に期待

今回のロケット発射実験は、全長約6.3m、直径約33cmの機体「FOX1号機(C1-2ロケット※)」に、AstroXと千葉工業大学により開発されたハイブリッドロケットエンジンを搭載したハイブリッドロケット打上げのテストだった。※C1-2ロケットは千葉工業大学での呼称。

前回2024年8月に同社が実施した実験よりもロケットが大型化しており、ロックーン方式でのサブオービタル打上げに使用するサイズの機体で、高度10kmに達する推力を持っているそうだ(宇宙空間は高度100km以上)。

画像: 今回打ち上げられた「FOX1号機」は、将来のサブオービタル打ち上げモデルと同じサイズとなっている。

今回打ち上げられた「FOX1号機」は、将来のサブオービタル打ち上げモデルと同じサイズとなっている。

ちなみに、ロケットにはエンジン燃焼に必要な「燃料」と「酸化剤」の組み合わせによって3つの種類が存在しており、燃料も酸化剤も両方液体である「液体燃料ロケット」、両方固体である「固体燃料ロケット」に対して、固体燃料と液体酸化剤を組み合わせたものが「ハイブリッドロケット」である。

ハイブリッドは燃料と酸化剤が自然に混じり合うことがなく爆発の危険性が少ない点や、火薬ではないため取り扱いが容易で管理コストを抑えることが可能な点、材料が身近なもので安価に作成できる点などさまざまなメリットがあり、近年学生やスタートアップによる低コストロケット開発で注目が集まっているタイプだ。

AstroXによると、今回のロケット打ち上げ実験を通して、ハイブリッドロケット発射技術を確認するとともに、打ち上げにいたるノウハウの確立も同時に確認できたという。日本製のロケットメーカーとして、今後の展開にも注目したい。

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