2024年10月14日、ヒョンデのグループ会社で自動車部品大手の「HYUNDAI MOBIS(ヒュンダイモービス)」は、ドイツの世界的光学メーカー「ZEISS(ツァイス)」と業務協力契約を締結し、フロントガラス全体を大型モニターとして活用する「ホログラフィックHUD」の実用化を推進すると発表した。早ければ2027年に量産車への採用が始まるという。(タイトル写真は「ホログラフィックHUD」のイメージ)

車内に設置する大型ディスプレイはもはや時代遅れ

「HYUNDAI MOBIS(ヒュンダイモービス)は、現代自動車グループ系列の大手部品メーカー。ヒョンデやキアの車両はもちろん、日本の自動車メーカー各社にも、インフォテインメント、コネクティビティランプ、カーナビゲーションやADAS関連ほか、電子部品を中心にさまざまなパーツを供給している。

一方、「ZEISS(ツァイス)」は1846年創業のドイツの老舗。光電子工学で世界有数の技術力を誇る。産業用だけでなく、カメラや眼鏡のレンズなど我々にも身近な存在だ。

この2社が共同開発を進めているのが、自動車用の「ホログラフィック・フロントガラス・ディスプレイ(ホログラフィックHUD)」である。フロントガラス全体を大型モニターのように活用するシステムで、ドライバーの視野を遮ることなく運転情報、ナビゲーション、インフォテインメント、コンテンツなどさまざまな情報を映し出す。遮るもののない開放感を提供しながら、ドライバーが道路から目を離さずに複数の情報を確認できるようにし、より安全な運転に貢献する技術であり、フロントガラス全体を使うのは実用化に成功すれば世界初となる。

画像: HUD(ヘッドアップディスプレイ)の採用は増えているが、一方でディスプレイモニターの大型化も進んでいる。(写真はアウディQ6 e-tron)

HUD(ヘッドアップディスプレイ)の採用は増えているが、一方でディスプレイモニターの大型化も進んでいる。(写真はアウディQ6 e-tron)

ナビゲーションや運転情報をフロントガラスに映し出すヘッドアップディスプレイ(HUD)は、いまや多くの車種に採用されるようになった。とは言え、走行速度やナビゲーションルート、制限速度警告など、比較的単純な情報しか表示しておらず、モニターディスプレイの補完的な役割にとどまっている。ゆえに各社はいかに大きなモニターディスプレイを車内に設置するかを競っており、昨今は助手席用のディスプレイも珍しくなくなってきている。その結果、さまざまなディスプレイデバイスが、かえってドライバーや同乗者の視界を遮ったり、収納などの利便性を犠牲にする現象も起きている。

画像: インパネ全面を覆うモニターディスプレイを採用しさらにタブレット状のコントロールパネルを採用するクルマもある。(写真はキャデラック エスカレード)

インパネ全面を覆うモニターディスプレイを採用しさらにタブレット状のコントロールパネルを採用するクルマもある。(写真はキャデラック エスカレード)

ホログラフィックHUDテクノロジーが実用化されると、運転席から助手席までの広いフロントガラス全体のスペースに、さまざまな運転情報、コンビニエンス、インフォテインメントのコンテンツを鮮明に表示できるようになる。ディスプレイモニターは不要になり、メータークラスターのスぺースや操作機器も最小限になるだろう。結果的に、車両のインテリアデザインも一変させるかも知れない。

SF映画で見た未来はもうすぐそこまで来ている

ホログラフィックHUDは、ヒュンダイモービスによる自動車電子システムと、ツァイスの超精密光学技術の融合によって実現可能になる。

ヒュンダイモービスは、システム開発を統括するとともに主要要素技術であるプロジェクターを開発・供給する。プロジェクターとは、レンズとリフレクターを使用して透明なスクリーンにビデオや画像などのコンテンツを投影するデバイスだ。

ツァイスは、精密光学技術をベースに独自のZEISSホログラフィックテクノロジーを応用したトランスペアレントディスプレイを開発・供給する。ホログラフィック技術を応用した透明で薄いフィルムは、プロジェクターから発せられる光から透明なフロントガラスにコンテンツを映し出す。フィルムの厚さは100マイクロメートル(約0.1mm)未満で、人間の髪の毛よりもわずかに厚い。

画像: ホログラフィックHUDの共同開発を正式発表したヒュンダイモービスとツァイス。今後、ホログラフィックディスプレイ技術の共同開発を拡大していくという。

ホログラフィックHUDの共同開発を正式発表したヒュンダイモービスとツァイス。今後、ホログラフィックディスプレイ技術の共同開発を拡大していくという。

両社は、それぞれの得意とする技術を結集・融合してして、早ければ2027年に量産品を自動車メーカー向けに供給する予定とのこと。すでに両社はプロトタイプを作成し、今年9月に国内のグローバル自動車メーカー(ヒョンデとキア?)向けにデモンストレーションを行ったという。

今後、共同開発領域を広げて車内外のホログラフィックディスプレイや3Dリアランプなど、さまざまな分野に広げていていく計画もあるという。EV普及とも連動し、ホログラフィック関連技術の次世代ディスプレイ技術の開発は、今後さらに加速していくことになりそうだ。

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