2024年10月15日〜18日に開催中の「ジャパン モビリティショー ビズウィーク 2024」の大林組ブースにひときわ目を引く「宇宙エレベーター」に関するパネルがあった。構想では最短で2050年の実現を目標にしているという。

宇宙エレベーター構想は“夢物語”から現実になりつつある

現在宇宙に行く手段といえば、ロケットによる輸送が一般的だが、打ち上げには大量の燃料を消費し、大量輸送には効率が悪く、コストも非常に高額になってしまうことが課題である。

一方、地球と宇宙の間をケーブルでつないで輸送する「宇宙エレベーター」は、輸送に大量の燃料を消費することもなく、低コストで輸送効率に優れる輸送手段と言われているという。

とくに、地球と宇宙を結ぶのに必要な軽さと強度を兼ね備えた素材「カーボンナノチューブ」の発見以降、宇宙エレベーター構想は完全な夢物語ではなく、実現可能なものとして急速に注目を集めるようになった。

上から下に垂らして建設する特殊工法が必要

宇宙エレベーターの建設は、普通の建造物とは異なり地上から建設することが事実上不可能であるため、宇宙(人工衛星)から地上にケーブルを垂らしていくという特殊な方法を用いる。

人工衛星は、地球の重力で引っ張られている力と、遠心力で宇宙に飛び出そうとする力が一致して釣り合っているため、高度を維持して周回し続けているが、高度3万6000㎞を回るものは、公転速度(地球の周りを回る速度)が地球の自転速度と同じで、赤道上に配置すれば地上から見た際に静止しているように位置するため、「静止衛星」と呼ばれる。

また、この静止衛星から地上にケーブルを下ろしていく際、垂らしたケーブルの分だけ地球からの重力を強く受けることになり、そのままでは落下してしまうため、反対側(宇宙側)にもケーブルを伸ばしてバランスをとることで高度を維持しつつ建設を進めることが可能となる。

最終的には垂らしたケーブルが地上に到達し、反対(宇宙側)のケーブル端(高度9万6000km)はカウンターウェイトとして配置されると宇宙エレベーターが完成する。

宇宙基地としてマルチに使える

宇宙エレベーターの全長は9万6000kmで、地球上の発着点となる「アースポート」、静止軌道には「静止軌道ステーション」など、エレベーターとしてのメイン設備のほかにも、高度に応じてさまざまな用途に利用可能な“総合宇宙基地”としての役割がある。

画像: 高度に応じてさまざまな設備を設置可能と、まさに夢の宇宙基地と言えるだろう。

高度に応じてさまざまな設備を設置可能と、まさに夢の宇宙基地と言えるだろう。

たとえば、火星と同じ重力になる火星重力センター、月と同じ重力の月重力センターでは、それぞれの重力環境を利用した実験や研究が可能で、低軌道衛星投入ゲートでは人工衛星を高度300kmの低軌道に投入できるという。

また、静止軌道よりも高い場所ではエレベーターの周回速度を利用して宇宙船や人工衛星を発射することで、地球からロケットを用いるよりも低コストで輸送することが可能になる。

【高度別の利用用途一例】
3900km    :火星重力センター
8900km    :月重力センター
2万3750km  :低軌道衛星投入ゲート(高度300kmの低軌道に人口衛星を投入)
3万6000km  :静止軌道(GEO)ステーション(静止軌道に人口衛星を投入)
5万7000km  :火星連絡ゲート(火星への玄関口)
9万6000km  :カウンターウェイト(太陽系資源採掘ゲート、木星・小惑星への玄関口)

大林組によれば、建設期間は25年を想定しており、2025年にアースポートの建設に着手できれば2050年の完成を見込めるというが、建設予定地の選定などに時間がかかり、実際にはもう少し先の話となりそうだ。

人類の希望が詰まった宇宙エレベーター構想に正面からチャレンジする日本企業「大林組」。今後の展開に世界中の注目が集まっている。

This article is a sponsored article by
''.