郊外住宅地における買い物難民の発生、そして配送業界の人手不足。そんな社会課題の解決をめざして、パナソニックHD、東急、UR都市機構が川崎市麻生区にあるUR虹ヶ丘団地で実証実験に取り組んでいるのが「空中配送ロボット」を活用した配送サービスだ。2023年11月から本年6月まで実施された第1期の実証実験に続き、本年10月下旬からいよいよ第2期の実証実験が始まる。今回は行政(川崎市)の協力を得て配送ルートを延伸するとともに、さらに複雑なルートを設定して、その実効性を確認するという。

世界初の空中配送ロボットによる持続可能なまちづくり

買い物難民はもはや過疎地だけの問題ではなくなっている。昭和から平成にかけて続々と誕生したいわゆる郊外住宅地では、住民の高齢化や免許証の返納、バス便の減少や路線の廃止、地元商店の廃業が止まらない。さらには配送を担うドライバーの人手不足問題も絡んで、郊外に暮らす人々の日常生活に与える影響が日増しに大きくなっている。

そんな社会課題の解消に向けて、パナソニックホールディングス株式会社(パナソニックHD)、東急株式会社(東急)、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が取り組みを開始したのが、世界初となる空中配送ロボットによる配送サービスだ。その社会実装をめざした世界初の実証実験は、2023年11月から本年6月まで、神奈川県川崎市麻生区にあるUR虹ヶ丘団地で行われた。

UR虹ヶ丘団地は、東急田園都市線「あざみ野駅」または「たまプラーザ駅」、さらに小田急小田原線「新百合ヶ丘駅」に近い立地にありながら、いずれも最寄り駅からはバス便を利用する典型的な郊外型の大規模集合住宅地だ。緑豊かな住環境である一方、バス便利用や丘陵地ならではの団地内高低差などが、買い物などの利便性における課題となっていた。

画像: 第1期実証実験のイメージ図。注文した商品はロープウェイ型のロボットで受取ボックスまで運ばれてくる。

第1期実証実験のイメージ図。注文した商品はロープウェイ型のロボットで受取ボックスまで運ばれてくる。

第1期の実証実験では、住民専用のWEBアプリを使って、東急ストア、吉野家など協力店に注文すると、配送ロボットが指定時間内に団地内の受取場所にある受取ボックスまで商品を届ける。ロボットは空中に敷設されたケーブルを伝って移動する(ドローンではなく有線によるコントロール)。自宅まで届けてくれるわけではないものの、坂道を上り下りしてバスに乗って駅前まで出かける労力が軽減されることが実証された。

画像: 前回の実証実験では団地の敷地内に受取ボックスが設置された(写真はイメージ)。

前回の実証実験では団地の敷地内に受取ボックスが設置された(写真はイメージ)。

地元行政の協力も得て社会実装に向けたさらなる一歩

10月下旬から始まる第2期の実証実験では、新たに地元の川崎市と連携。団地の敷地内を通る市道(川崎市道)を横断し、前回のルートから分岐、延伸してより配送対象区域が広がる。また、団地内集会所の入口まで配送を行うことで、さらなる利便性の向上も図られる。

画像: 今回の実証実験では川崎市道の上を横切るルートも設定。(画像はイメージ)

今回の実証実験では川崎市道の上を横切るルートも設定。(画像はイメージ)

さらに、集会所内に設置する会員登録不要のタッチパネル端末からの注文受付も開始。支払い方法の見直しを行い、これまでのクレジットカードや一部の電子決済に加え、現金の取り扱いも利用できるようになるという。

商品の受取場所に集会所を利用することによって人が集い、外出や交流の機会が創出されることによるウェルビーイングの向上や、コミュニティの形成による地域活性化も期待されている。

画像: 新たに受取ボックスを団地集会所前に設置することで、より多くの人が利用しやすくなる。

新たに受取ボックスを団地集会所前に設置することで、より多くの人が利用しやすくなる。

首都圏の行政と民間が連携した空中配送の実証実験は今回が初の試みだ。今後の「街のインフラ」となる将来像に向けた重要な第一歩として、さらなる改良そして早期の社会実装に期待したい。

【実証実験の概要】
●今回の実証実験の目的
・新ルートの配送実施に必要な技術の検討。
・将来的な社会実装に向けた行政との連携手法の検討。
・新たな市場ニーズの検証。

●新規に実施する実証実験
・空中配送ロボットの川崎市道横断とそれに伴う関連技術の検証
・配達先の拡充(団地集会所まで配達)
・注文方法、支払い方法の拡充(タッチパネル端末での注文受付、現金支払を追加)

●実施場所:川崎市麻生区虹ヶ丘2丁目 UR虹ヶ丘団地内

●実施期間:2024年10月下旬〜2024年12月下旬(上記期間において不定期で運行)※11月9日(土)に虹ヶ丘団地で開催される「第3弾 虹のまちにわフェス」において、空中配送ロボットを運行予定。一般見学が可能。

●連携自治体:川崎市(道路占用許可権者)

●実証実験の協力社
・株式会社東急ストア
・東急バス株式会社
・株式会社URコミュニティ
・株式会社吉野家

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