“すべての人に電気自動車”を実現するルノーの本気
2023年11月15日に開催されて投資家向けイベント「ルノー・キャピタル・マーケット・デー」では、当時設立まもないEV/ソフトウェア開発の新会社「アンペア(Ampere)」の事業戦略が明らかにされた。2024年にはセニックと“5”(サンク)、2025年にSUVの“4”(キャトル)、2026年にはトゥインゴのEVをそれぞれ発売するというものだった。
新型ルノー5 E-Techはすでに発売が開始され、間もなく開幕するパリモーターショーに向けては、すでにルノー4 E-Techの出展もアナウンスされている。そして畳みかけるように発表されたのが、「トゥインゴ E-Tech electoric prototype」の一般公開だ。欧州の自動車メーカーの多くがEV戦略の見直しを発表する一方、ルノー/アンペアのポートフォリオは着々と進められている。
「トゥインゴ E-Tech electoric prototype」は、プロトタイプとは銘打っているものの限りなく量産モデルに近い。もはや伝説と言ってよい初代トゥインゴ(1992〜2007年)を現代的な解釈で再構築したこのショーカーは、ルノー5 E-Techやルノー4 E-Techと同じく、AmpRスモールプラットフォーム上に構築されている。
市街地走行をメインに前輪駆動に限定して部品点数を抑え、ルノー5やルノー4と開発を並行することによってコストを40%削減。2026年に発売を予定しており、車両価格は2 万ユーロ(約325万円)未満に設定するという。すべての人に電気自動車を提供するというルノーの目論見がいよいよ実現しそうだ。
根強い人気を誇る初代のデザインを現代風に解釈
初代トゥインゴは、キャビンにタイヤが4つ付いたようなタイトかつ特異なシルエット、愛嬌のあるヘッドランプ、そして低価格で老若男女問わず人気を集めた。全長3430×全幅1630×全高1420mmという初代のボディサイズは、とくに都市部の狭い裏道で取り回しが抜群。ファニーなエクステリアからは想像出来ない機敏な身のこなしを披露して、そのファンなハンドリングが人気に拍車をかけた。現行型の3代目もその伝統は継承しているものの、初代を懐かしむ声が多かったのも事実だ。
EVに生まれ変わる4代目トゥインゴは、そんな根強いファンの声に応えるとともに、これからのシティカーに求められる要素を巧みにも織り込んでおり、単なる懐古趣味に終わっていない。
もちろん最大の違いはパワーユニットにあるわけだが、ボディも初代の3ドアハッチから5ドアハッチ(5ドアハッチは3代目から)に改められており、より実用的なパッケージングが採用されているのが大きい。EV化によってホイールベースに余裕が生まれたからだろう。ボディサイズはまだ公表されていないが、おそらく歴代モデルと大差ないはずだ。
エクステリアの細部には、ファンを喜ばせるディテールがそこかしこに仕込まれている。丸型のヘッドランプとフロントエンドのライン、ボンネットには3つのダミー開口部が設けられている。またドアハンドルの形状も、初代を象徴的する丸型に。初代のディテールをモチーフに最新のテクノロジーで再現されているのもポイントだ。
パリモーターショーの開幕も迫り、出展各社から徐々に展示車の情報が出始めている。なかでもお膝元での開催とあってルノーの動向が目を惹く。「ルノー4 E-Tech」、EVとFCEVの良いとこどりをしたコンセプトカーの「Embleme」、そしてレストモッドプロジェクト第4弾の「ルノー17」まで、今回のショーでは見どころが多い。