急拡大が予想されるアジア圏の電動バイク市場
市民の生活を支える移動手段としてバイクやスクーターが多く活躍するアジア圏では、CO2排出量を削減するために電動バイク販売比率を高める目標を立て、補助金制度を導入している国も多い。とはいえ、二輪車販売台数の多いインド(年間約1800万台)やインドネシア(同600万台)、タイ(同200万台)における電動バイクの販売比率はまだ数%と低いこともあり、今後市場規模が急激に拡大していくことが見込まれる。
こうしたアジア圏ですでに大きなシェアを持つホンダは、2024年9月に公開した統合報告書「Honda Report 2024」の中で、インドと東南アジアを中心に電動バイクを多く投入することで攻勢をかけていくと公表。2024年を電動バイクのグローバル展開元年として、2030年までに30モデルを発売、400万台販売することを目標にしている。
すでに日本ではベンリィe:やジャイロe:といったビジネス向けモデルに加えて、個人向けのEM1 e:など、独自の交換式バッテリーシステム「ホンダ モバイルパワーパックe:(Honda Mobile Power Pack e:/以下、MPP)」を搭載した電動バイクを展開している。海外も同様にMPP採用モデルを展開するとともに、今後は固定式バッテリー搭載モデルも加えることでユーザーの選択肢を多様化させるという。
「CUV e:」は日本でも発売予定か
その固定式バッテリー搭載モデルの第1弾となるモデルが、EM1 e:をベースにパワートレーンやエクステリアデザインを一新した「ICON e:」であり、今回インドネシアで発表された。同国内で生産、発売されたのちにグローバル展開を予定されている。
三元系リチウムイオンバッテリーを採用し、充電は車載状態、バッテリー単体のふた通りで可能。後輪にインホイールモーターを採用して、効率的なモーター出力に制御するパワーコントロールユニットにより、一充電あたりの走行可能距離50km以上を実現するという。動力面だけでなく、シート下のヘルメット収納スペースやラゲッジボックスを確保、スマートフォンを充電できるUSBソケットを標準装備するなど、使い勝手のよさも追求されたモデルだ。
もうひとつ同時に発表されたモデルが「CUV e:」だ。ジャパンモビリティショー2023で公開された「SC e: コンセプト」を市販モデル化したもので、EM1 e:などと同様にMPPを2個搭載した排気量110cc相当の電動バイク。
高効率の自社製モーターを搭載して走行可能距離を向上、また走行シーンやユーザーの好みにあわせてパワートレーン制御を「スタンダード」、「スポーツ」、「ECON」の3つから選択できるドライブモードを採用するなど、電動バイクらしい機能も盛り込まれている。狭い場所でのUターンや駐輪時に便利なリバースモード、Bluetooth通信によるスマートフォン連携などの機能もある。
ちなみにこの「CUV」という名称、実は1994年にリース販売されたホンダ初の電動スクーター「CUV ES」に由来する。官公庁や地方自治体などに向けて200台限定で発売されたため知る人は少ないかもしれないが、「Clean Urban Vehicle」の意味を継承する新時代のパーソナルコミューターとして活躍が期待される。
発売時期は明記されていないが、ホンダの統合報告書/二輪事業戦略を読むと「CUV e:」はインドネシアだけでなく、欧州や日本での展開も予定されているように見える。すでに販売されているEM1 e:とどう差別化されているのか、詳細が気になる存在だ。