世界最大手の強みを生かしたローカライズド戦略
Limeはアメリカの電動モビリティシェアサービス会社で、2017年に自転車のシェアリングサービス「LimeBike」としてスタートし、翌2018年には電動アシスト自転車と電動キックボードのシェアリングサービスを開始。現在では全世界でユーザー数7500万人、車両台数20万台を誇る世界最大の電動モビリティシェアリングサービスに成長した。
Limeの強みは、利用者などの意見に応えるために車体やシステム等を自社で開発し、進化し続けている点にあり、総乗車回数6億回、計10億km分の利用データに基づいて改良を重ねた結果、現在運用されている電動キックボードは6年目にしてすでに第4世代となる「Gen4」にアップデートされている。
「Gen4」は、立ち乗りの「電動キックボード」と、この電動キックボードの車体に着座シートと収納バスケットが追加装備された「電動シートボード」の2種類をラインナップし、乗り心地の良いエアタイヤ、ハンドルバーが手前に湾曲した「Swaybar」設計、故障を見越して再利用可能なモジュール化部品を採用するなど、安全性・整備性が高められているのが特長だ。
ちなみに日本導入モデルは16歳以上が免許不要で乗ることができる「特定小型原付」の保安基準に適合するように専用設計された「Gen4.1シリーズ」で、ハンドルバーの長さが特定小型原付の全幅規定(60cm以内)に収まるように短くされているほか、歩道モード(最高速度6km/h)や最高速度表示灯が追加されるなど日本専用設計となっており、国土交通省の保安基準審査制度である性能等確認制度をクリアしている。
なお、海外で展開されている電動アシスト自転車については、車両が欧米仕様であるため日本人の体格だと大きく、重くなってしまうことから同時投入は見送られ、今後日本向けに改良された新モデルが提供される。
2024年8月19日のサービス開始から数週間のデータによると、ユーザーのおよそ7割が「電動シートボード」を、約3割が「電動キックボード」を利用しており、「電動キックボード」利用者の走行距離が平均2〜3kmに対して「電動シートボード」の利用者は最長19km利用したユーザーがいるなど、乗車距離が長い傾向にあるという。
「電動シートボード」は、電動キックボードモデルにシートとバスケットを外付けしており、ハンドル高/シート高が固定式となっている。ハンドルが立ち乗りのキックボードと同じ高さ(=座り乗りには高い)であるため、固定式のシート高と合わせ、身長が低い方にとってはやや使いづらいかもしれない。
利用料金は、基本料金100円+30円/分の通常プランと、LimePassと呼ばれる時間内定額プランの2系統ある。LimePassは一定の期間に複数回利用する場合などは割安になるほか、通常プランにもスマホアプリを通じて乗車中にヘルメットを着用している写真を送ると、利用料金が10%割引される「ヘルメットセルフィ」というシステムがある。特定小型原付はヘルメット着用が努力義務だが、着用率向上に向けた取り組みとして注目されるだろう。
三井住友海上と電動キックボードの安全な普及を推進
Limeと三井住友海上の協業では、利用者への損害保険の提供、安全講習会の開催、電動キックボードの利用ガイドブック制作、三井住友海上のネットワークを活用したポート設置・地域展開サポートが行われ、利用者の安全を確保し、電動キックボードの普及を促進すると共に、交通渋滞の緩和や環境負荷の低減のほかラストワンマイルの課題解決への貢献が期待されている。
【Lime・三井住友海上の協業内容】
・利用者に対する損害保険の提供
Limeのシェアリングサービスに、三井住友海上の自賠責保険と対物・対人賠償事故を補償する自動車保険を導入し、万が一事故に遭った際の補償を確保。
・安全講習会の開催
Limeの電動キックボードの利用者や一般の来場者を対象に、交通安全やリスクマネジメントに関する講習会を定期的に開催。
・電動キックボード等の利用ガイドブックの共同制作
電動キックボードの安全な利用方法や交通ルール、保険の内容などをまとめたガイドブックを共同制作し、Limeのアプリやウェブサイトなどで配布。
・三井住友海上のネットワークを活用したポート設置の展開
三井住友海上のビジネスマッチングを活用して、Limeの電動キックボードのポートを提携企業などに設置し、利用者利便性と電動キックボード稼働率向上に貢献。カーボンフリーな移動手段の定着・拡大を図る。
・三井住友海上の自治体とのネットワークを活用した地域展開
三井住友海上の自治体との包括連携協定などを活用してLimeの地域展開をサポート、、全国への電動キックボードの普及を図る。