2024年8月23日、東芝とファブリカコミュニケーションズ、丸紅プラックスの3社は、中古車となったEVに搭載されている駆動用リチウムイオンバッテリーの状態を診断する実証事業「中古車EV電池診断プロジェクト」を開始した。

課題はバッテリー性能を評価する基準の確立

日本の自動車販売台数のうちEVが占める割合は2%ほどで、欧州(約15%)や米国(約8%)、中国(約20%)と比較するとかなり低いところで推移している。それでも日産 サクラと三菱 eKクロスEVが発売された2022年5月以降に急進し、2022年に約5万8000台、2023年に約9万台、2024年上半期はサクラ/eKクロスEVの一部改良(5月)にともなう台数減もあって約3万台。2022年以降に18万台近くが販売されたことになる。

そうしたなかでも2022年に販売されたモデルは2025年に初回車検を迎え、年初から乗り換え需要による中古車市場への流入数増加が予測される。その数は右肩上がりになるはずだ。

そこで課題となるのが中古車EVのリチウムイオンバッテリーの性能がどれだけ残っているかということ。エンジン車であれば使用や経年による劣化は走行距離、整備記録などによってパワートレーンの評価はある程度できたが、EVではそうはいかない。とくにはバッテリーは走行距離だけではなく、急速充電した回数やエアコン稼働をはじめとする使用状況によって劣化の具合も左右されるはずだ。

しかし、劣化具合によるクルマの価値算定の指標が確立されておらず、状態診断や診断結果に対する真偽の評価が極めて難しく、中古車EVの購入を検討するユーザーにとって不安材料になっていた。

画像: 20kWhの駆動用バッテリーを搭載する日産の軽自動車「SAKURA(サクラ)」。急速充電にも対応する。

20kWhの駆動用バッテリーを搭載する日産の軽自動車「SAKURA(サクラ)」。急速充電にも対応する。

そうした状況を見越して2022年4月、東芝とファブリカコミュニケーションズ、丸紅プラックスの3社は共同して、バッテリーの状態を診断する技術の実証実験を行うことに合意し、サービスの創出に向けて動き出していた。

東芝は二次電池「SCiB」開発で培った電池劣化診断技術をもとに、残存容量や残存性能、そして電池内部の状態を詳細に、短時間に把握できる装置を開発。丸紅プラックスとファブリカコミュニケーションズは、実証実験で得た測定データを活用して、中古車EVの価値の算定手法を確立することを目指してきた。

そして今回2024年8月23日に3社は、中古車EVの評価指標(試作版)を完成させるとともに、バッテリーの状態を診断する実証事業「中古車EV電池診断プロジェクト」を開始した。これはファブリカコミュニケーションズが運営する中古車情報サイト「車選びドットコム」で半年間掲載することにより、実用性を検証するというものだ。

画像: 駆動用バッテリーの診断結果は中古車ラインナップ画面に表示される。

駆動用バッテリーの診断結果は中古車ラインナップ画面に表示される。

外務省が策定した、2030年の温室効果ガスの排出削減目標に向けて、EV販売台数は新車・中古車市場ともに拡大していくことが見込まれる。中古車EV市場全体の透明性と信頼性を向上させることで、購入者だけでなく販売事業者の双方にとって公平で健全な市場を構築することを支援していくという。

日本自動車査定協会や日本中古自動車販売協会連合会といった業界団体が、共通した中古車EVの評価指標を取り入れることになれば、購入検討者にとっての安心材料にもなるのではないだろうか。

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