株式会社JTBが単なる観光事業ではない新たな取り組みを始めている。そのひとつが今回のプロジェクトで、多くの地方が抱えるオーバーツーリズムや少子高齢化という課題を自治体や他の事業者と一体となって解決していこうというものだ。舞台となるのは瀬戸内の島々の中で2番目に大きい小豆島、具体的な内容をみていこう。

いま地方が抱える課題は20年後には日本全体に広がってしまう

この取り組みは「20年先の小豆島をつくるプロジェクト」と命名されている。そこには現在の小豆島が抱える課題は20年後には日本全体に広がってしまう。そうであれば小豆島の今の課題を解決していけば、20年後の日本の指針になるはずという志がある。

そして、課題解決のためには地元が“一致団結して皆でやる”という思いがある。小豆島には土庄町(とのしょうちょう)と小豆島町があるが、まずこのふたつの町が併走して問題解決に取り組むという土台がある。今回の事業についての発表会には土庄町の岡野町長と小豆島町の大江町長が出席していたが、2022年のほぼ同時期に町長に就任した“同志”であるという。ふたつの町の連携は4つあった観光協会の一本化につながった。そして「一般社団法人 小豆島・瀬戸内エリアマネジメント協会」にJTBが参画して小豆島における投資開発をするプロジェクトがスタートしたというわけだ。

画像: 発表会に登壇したメンバー。前列左から3番目が土庄町の岡野町長、4番目が小豆島町の大江町長。

発表会に登壇したメンバー。前列左から3番目が土庄町の岡野町長、4番目が小豆島町の大江町長。

“一致団結”という点では非常に多くの事業者が参画していることも特徴的だ。プロジェクト第一弾となる「シェアサイクル」はソフトバンクの子会社であるOpenStreetがシェアサイクルアプリ「ハローサイクリング」を使って、最新型電動アシスト自転車160台を導入して島内に42カ所のステーションを設ける予定だ。その最新電動アシスト自転車は「ハローサイクリング」事業を各地で手がけるシナネンのグループ会社が開発したものとなる。

画像: 観光資源が豊富な小豆島だが知名度は高くなく、宿泊施設も少ないのが課題のひとつ。

観光資源が豊富な小豆島だが知名度は高くなく、宿泊施設も少ないのが課題のひとつ。

「観光地の言葉の壁をなくす」のはポケトーク株式会社で、AI通訳機「ポケトーク」やAI同時通訳「ポケトーク カンファレンス」などが観光現場に導入される。このAI通訳機は74言語を音声/テキストに翻訳し、11言語をテキストのみに翻訳することができるというから、インバウンド対応としては万全といえそうだ。

画像: シャアサイクルに使われる電動アシスト自転車。シナネンモビリティPLUSとシナネンサイクルの共同開発。

シャアサイクルに使われる電動アシスト自転車。シナネンモビリティPLUSとシナネンサイクルの共同開発。

次に株式会社エイトノットは船の自動運転を手がける事業者で、小豆島観光においてAI自動運転ボートを活用した海上ルートの開発を担当する。また自動運転バスの実証実験も行われる。これは東京大学発のベンチャー、scheme verge株式会社がソフトバンク子会社ボードリーの「BYD J6」という小型バスを使って行うものだ。

さらに地元の小豆島交通株式会社、建設コンサルタントでB2G事業を手がける八千代エンジニヤリング株式会社、14万人の大学生が会員になっているという家庭教師派遣などの教育事業を展開する株式会社トモノカイが今回のプロジェクトに関わっている。

画像: いま地方が抱える課題は20年後には日本全体に広がってしまう

スケジュールとしては自動運転バスの実証実験が2024年9月、自律運航無人ボートの実証とポケトーク社AI翻訳機導入、国立公園におけるAIドローン事業を活用した事業開発が11月、さらに関西からの誘客を目的とした空路の事業を2025年4月以降に行うと発表された。

そして、その他の事業についても正式決定し次第、発表されるという。小豆島が一致団結して展開される今回のプロジェクト、どのような成果を上げることができるのか。観光事業が地元産業の大きな部分を占める自治体、あるいは観光事業を大きく育てたいと考えている自治体はもちろん、地方創生を考える人たちから大いに注目されることになりそうだ。

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