2024年7月31日、鹿島は2017年から開発を進めてきた、山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)の完成を発表した。

省人化、災害リスク低減、生産性アップを実現

建設業界では「熟練技能者不足」、「高い労働災害の発生率」、「低い生産性」が課題となっている。今回鹿島建設が発表した「A4CSEL for Tunnel」では、こうした問題を解決すべく山岳トンネル工事の掘削作業を6つのステップ(①穿孔 ②装薬・発破 ③ずり出し ④アタリ取り ⑤吹付け⑥ロックボルト打設)に分け、各ステップで使用する重機を自動化し、それらを一元管理する次世代の建設システムとして設計されている。

画像: 山岳トンネル工事を6つのステップに分割し、それぞれの工程を自動化している

山岳トンネル工事を6つのステップに分割し、それぞれの工程を自動化している

2017年の開発着手以降、2018年11月に模擬トンネルを試験フィールドとして、各重機の自動化開発および基本動作の確認を行い、2021年10月には実際の工事現場と同等の環境で実証すべく、カミオカンデそばの神岡試験坑道において、建設業界で初めて地山を対象としたデータに基づく自動化施工の開発に着手していた。

【神岡試験坑道における開発成果】
穿孔 : 最適自動発破設計システム
穿孔時に取得した岩盤データから、最適な発破パターンが自動生成されるシステムを開発。発破パターンデータを全自動コンピュータジャンボに転送することで、オペレータ1名での自動穿孔が可能にし、余掘量は従来施工比60%低減、サイクルタイムは同比20%短縮を実現した。
装薬 : バルクエマルション爆薬
装薬の自動化に向けた第一歩として、現場製造式の「バルクエマルション爆薬」を採用した全断面発破を実現。
ずり出し : 自動ホイールローダ、遠隔バックホウ
ホイールローダに搭載したLiDARの計測データをもとに坑内の地図を作成しつつ、自機の位置をリアルタイムで推定するSLAM技術を活用することで、非GNSS環境下であるトンネル坑内においても掘削ずりの掬(すく)い取り、運搬、荷下ろしの自動化を実現し、切羽近傍の完全無人化を実証した。
アタリ取り : アタリガイダンスシステム、遠隔ブレーカ
ブレーカ本体に搭載した3Dレーザスキャナにより、切羽に立ち入らなくても発破直後の露出した岩盤形状を定量的かつ自動的に評価できるアタリガイダンスシステムを開発。また遠隔操作することで、アタリ取り作業時の切羽の完全無人化を実証した。
吹付け : エレクタ付2ノズル自動吹付け機
2ノズル自動吹付け機に搭載した3Dレーザスキャナによる切羽形状の測定結果を基にして吹付け計画を自動生成し、左右2ノズルをプログラム制御する「自動吹付けシステム」を開発。従来の1ノズル自動吹付けと比較して約50%の施工時間の短縮を実証した。
ロックボルト : 自動ロックボルト打設機
穿孔位置への誘導から穿孔、モルタル注入、ボルト挿入までの一連作業を自動化するブームを左右2つ備えた「2ブームロックボルト施工機」を開発。オペレータ1名によるロックボルト打設が可能であることを実証した。

鹿島は今後、この神岡試験坑道で実証した各作業ステップの自動化施工技術を他の工事に順次導入、すでに実用化している、覆工コンクリート打設の完全自動化技術や、補助工法であるAGF工法の機械化技術等を総合的に適用することで、山岳トンネル工事のさらなる安全性および生産性向上に繋げていくという。

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