電動モビリティのパイオニア「glafit」が提唱するシニア向けモビリティ
glafitといえば電動原付と自転車という二つの車両区分を“モビチェン”機構により切り替え可能な革新的モビリティ「GFR-02」や、2024年に発売された都内最強の激坂も登坂可能なパワフルモーターを搭載した特定小型原付「NFR-01 Pro」が有名で、電動モビリティ業界をリードしてきた。
こうしたすでに販売されているモビリティはどちらかといえば若者向けの2輪モビリティであったが、ユーザーの意見として、2輪では不安があるという高齢者やその家族からの問い合わせが多数寄せられているそうで、免許返納後のシニア層向けのモデルにもニーズがあるという。
従来も免許不要で、しかも安定性の高い4輪モビリティとしてシニアカーが存在していたが、走行可能なエリアは歩道上に限定され、最高速度も6km/hと遅かったため、遠くに移動する手段としては限界があるという課題が浮き彫りになっていた。
そこで、快適に長距離を移動できる特定小型原付(最高速度20km/h)の電動4輪モビリティとして誕生したのが、今回発表されたglafitの4輪特定小型原付なのである。
アイシンが開発した「リーンステア制御」がロール安定性に貢献する
特定小型原付は、車体サイズの要件が普通自転車と同じ全長190cm、全幅60cm以下に制限されている関係で、カーブを安定して走行可能な4輪モビリティを設計することが難しく、車道と歩道を行き来する際の段差や、スピードを出して旋回する際の遠心力への対処等、ロール安定性の確保が重要な課題として立ちはだかっている。
この全幅60cmというのは、一般的な乗用車の全幅の1/2〜1/3倍となり、仮に全幅が1/2倍になったとして仮定した場合、重心の高さは同じとすると
・同じ段差高を片輪のみ乗り越えた時の車体の傾き:2倍
・車体が傾いた時の耐横転性:1/2倍
となり、車両の安定性は1/4倍となってしまうという。
そのため、2023年7月に特定小型原付区分が設定されてから約1年間経過した現在でも、電動キックボードや電動バイクをはじめとした2輪タイプが市場に溢れる一方で、4輪タイプの製品はほぼ存在していないのだ。
glafitはこうした車両安定性という課題を解決すべく、アイシンが開発した「リーンステア制御」技術を導入した。glafitの説明によれば、車体が傾いた(リーン)際に、前輪を制御(ステア)することで車体の傾斜を抑える画期的な機構とのことで、この技術により、自転車並みの全幅しかない特定小型原付4輪であっても、高い自立安定性を確保できるという。
シニアの移動の自由を保障する一つの選択肢となるか
今後は、この「リーンステア制御」を搭載した4輪型特定原付プロトモデルを利用し、65歳以上の方を中心とした実証を開催し、試乗を通じて機能性や操作性の評価や感想のほか、所有やシェアリングなど利用シーン別でのニーズや課題把握などが実施される予定となっている。
また、将来的には自動運転の実装も見据えており、7月の和歌山市を皮切りに、積極的に実証を行いながら製品化を目指していくとのことで、これからの展開が楽しみな製品と言えるだろう。
若者だけでなく、免許返納後のシニアの移動の自由をどう確保するのか。glafitの4輪モビリティが一つの選択肢として与える影響に要注目である。