既存車の改造ではなく無人運転前提の専用設計
SF小説の古典的名著「海底二万里」の著者ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)にあやかった新会社の母体は、2017年にリマック・グループの一部門として設立されたProject 3 Mobilityである。リマックと同じくクロアチアのザグレブを拠点に、ロンドンにも研究開発センターに置いて、ロボタクシーおよびそれを利用した商用サービスの開発を続けてきた。ちなみにこのプロジェクトには、韓国のヒョンデおよびKIAも資本参加しているほか、直近では、インテル傘下の自動運転技術のエキスパートであるモービルアイ社と技術提携を発表していた。
発表された新型ロボタクシーは、多人数乗車のシャトル型になるという事前情報とは異なり、コンパクトな2ドアクーペスタイルで登場した。ヴェルヌ社(およびProject 3 Mobility)の調査によれば、タクシー利用者のほとんどが1名ないし2名乗車であるとのこと。ならば、細い路地にも入って行けるコンパクトサイズに収め、乗客スペースを拡大して(ヴェルヌ社は“ロールスロイスに匹敵する”と主張している)、かつ荷物の積載スペースも確保できるパッケージに行きついたという。さらに乗降性を向上するスライド式のドアを採用するなど、都市交通に特化されたスタイルが斬新だ。
他にもエクステリアで目を惹くのは、ワイパーが存在していないところ。ドライバーが同乗しない自動運転ロボタクシーなので、雨天でもワイパーを使う必要はないからだ。今回の発表では車両本体の細かなスペックはまだ明らかにされていないが、LiDARなどのセンシングディバイスが完全にボディと一体化している。
都市部のクルマの在り方が大きく変わる
利用法は極めて簡単。スマホにインストールした専用アプリによって、呼び出し→目的地設定→発進→目的地に着いたらスマホで決済。これだけだ。呼び出しの待ち時間で、スマホアプリを使って空調や座席位置まで事前に調整できるのも専用設計ならではのアメニティと言えるだろう。
ハンドルもブレーキもない車内には戸惑いを覚えるかもしれないが、43インチの巨大なモニターでさまざまなエンタテインメントを17個のスピーカーによるハイクオリティなサウンドで楽しむことができる。また、利用者が任意の場所で停止/発進することができる機能なども搭載している。
リマックと言えば、超絶性能を誇るEVハイパースポーツ「ネヴェーラ(NEVERA)」で知られているが、同じ工場でハンドルの付いていないポッド型のロボタクシーがハイパーEVスポーツとともに生産されることになる。
まずは2026年内にクロアチア国内で事業を開始、翌2027年にはイギリスとドイツでサービスを開始する。最終的にはクロアチアから毎年数万台規模の輸出を目指す。すでに水面下では欧州・中東の11都市で導入契約が結ばれており、さらに30都市以上と導入を協議中であることを明かすなど、ヴェルヌ社のロボタクシー事業は順調なスタートを切ったようだ。